少子化で廃部の野球部、最後の部員は女子生徒一人 初心者から成長し絆を強める
少子化で野球部廃部、最後の部員は女子生徒一人

少子化の波で野球部が廃部、最後の部員は女子生徒一人

大阪府羽曳野市立高鷲中学校の野球部が、少子化の影響を受けて昨年度に廃部となった。創設は少なくとも1950年代半ばにさかのぼる歴史ある部活動が、ついに幕を閉じたのである。

初心者から始めた女子生徒の挑戦

最後の部員となったのは、大石灯里さん(15歳)だ。2023年春、野球経験が全くなかった彼女が入部した。きっかけは体験練習で上級生から「センスあるで」と褒められたことだった。「高校生が甲子園を目指すみたいに、野球に青春をささげるのってかっこいいかも」という思いから、飛び込んだ決断だった。

当初は体格差やパワーの違いに戸惑い、打撃練習では空振りが続き、キャッチボールで顔にボールを当てては泣く日々だった。しかし、先輩たちはグラウンドでは容赦なく、大石さんは「ただがむしゃらについていくしかなかった」と振り返る。

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成長とチームの絆の深化

入部から2か月ほどたった練習試合で、初めて打席に立った。代打として出場し、初球をファウルにすると、ベンチからは「当たった!」とのどよめきが上がった。結果は三振だったが、秋には初ヒットを放つまでに成長した。

顧問の野田雄太さん(40歳)は、大石さんの加入が部に与えた影響を次のように語る。「上級生が『何とかこの子にうまくなってほしい』と思うようになり、部員間のコミュニケーションが活発になった。彼らにとっては『後輩』というより『仲間』で、いつしか部になくてはならない存在になっていった」。

唯一の部員としての奮闘

2年夏以降、大石さんが唯一の部員となると、別の中学校との合同チームに参加した。背番号「9」をもらい、「パワーがない分、技を磨かないと」とバント練習を徹底。3年夏の大会ではスクイズを決めてチームに貢献した。

「ルールすら知らなかった私が、打席で相手ピッチャーの球種を予想するまでになった。やりきった」と大石さんは語る。彼女の引退と同時に、高鷲中の野球部は廃部となった。

苦渋の廃部決定と卒業試合

平野桂校長は、廃部について「子どもたちの選択肢を狭めることは避けたかった」としながらも、少子化の影響で生徒数が減少し、部活動の指導に割ける教員が限られる状況を説明。「安全確保のためすべての部に複数の教員を配置するという原則に基づくと仕方なかった」と苦渋の決断だったことを明かした。

3月29日に行われた卒業試合には、OBや保護者ら50人以上が集結。大石さんは1番レフトで出場し、第2打席では意表をつくバントで好機を広げ、第4打席では安打を放った。グラウンドは拍手に包まれ、彼女は「記念球」を受け取った。

未来への歩み

野田顧問は「大石のバントで進めた走者を後続がかえす『高中野球』がよみがえった」と喜び、「最後の部員という重いものを背負える適任者だった」とねぎらった。

大石さんは「先輩たちが築いてきた歴史が無駄じゃないことを示したいと頑張ってきた。仲間と同じ感情を共有することで人生は豊かになる、と学んだ」と語る。4月からは府内の高校に進学し、次の目標を探し始めている。「また野球をするかどうかはわからないけど、人との関わりを大切にして、これからも自分で決めたことをやり切りたい」と未来への決意を述べた。

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