半世紀の応援を続ける二人の熱き想い
甲子園球場で19日に開幕する第98回選抜高校野球大会に出場する東洋大姫路(兵庫県姫路市)には、半世紀にわたってチームを支え続ける特別なファンがいます。同校OBの松本義一さん(76)と、私設ファンクラブの最長老である中岡忠勇さん(89)です。二人は1977年夏に味わった全国制覇の感動を再び目撃することを心から願っています。
余命宣告を受けた元刑事の切なる願い
2月中旬、松本さんは市内の野球部グラウンドで練習に励む選手たちを熱心に見つめていました。「甲子園で優勝するのを、この目で見たいんや」。がんの診断により医師から余命宣告を受けた松本さんにとって、49年前の夏に見逃した優勝の瞬間に立ち会うことが最大の願いです。
松本さんは同校の3期生として1968年に卒業後、県警に採用されました。主に刑事として活躍し、捜査一課では1984年から85年にかけてのグリコ・森永事件や、1987年の朝日新聞阪神支局襲撃事件の捜査にも関わりました。激務の合間を縫って、限られた休日にはグラウンドに足を運び続けました。「特殊な仕事やからね。一生懸命な球児たちを見ていると気分転換になった」と当時を懐かしみます。
フェンス越しに選手たちの練習を眺めながら、「だいぶ体ができてきたな」「新学期はどんな子が来るんかな」と思いを巡らせ、選手たちを後ろ姿だけで判別できるほどに。試合で負けた後には、「頑張れ」「惜しかったな」と声を掛けて励ましてきました。
甲子園常連校となると、保護者や他のファンと共にアルプススタンドで応援しました。「みんなと応援するのがいい。あそこは内野席ともバックネット裏とも違う」と語ります。1977年夏の決勝戦で東邦(愛知)と球史に残る名勝負を演じた際は、仕事の都合で観戦できず、アルプススタンドに行けなかったことが今も心残りだといいます。
警部補として勤め上げ、60歳で退職。昨年1月、医師から「余命数年」と告げられました。現在の願いは、優勝を果たしたナインと岡田龍生監督(64)を甲子園で直接見ることです。「命ある限り東洋大姫路の野球を見て、応援したい」と力強く語ります。
私設ファンクラブ最長老の熱狂の記憶
約10人が所属する東洋大姫路の私設ファンクラブで最長老の中岡さんは、半世紀近く前の優勝と、古里への凱旋を目の当たりにしました。決勝戦は延長の末のサヨナラゲームとなりました。「ホームランで試合が決まった時は涙が出た」としみじみと回想します。
姫路市の大手前通りや大手前公園で行われたパレードと優勝報告会は、市民らで埋め尽くされました。「今は様々な制約で難しいだろうが、あの光景は何度でも味わいたい」と熱く語ります。
監督も共有する熱い期待
優勝時に同校野球部の1年生だった岡田監督も、甲子園のアルプススタンドから初優勝の瞬間を見届けました。優勝報告会には警備係として立ち会い、「熱量がすごかった。今回はプレッシャーがあるが、出場するからには期待に応えたい」と決意を新たにしています。
1977年8月の決勝では、東邦と対戦。1対1で迎えた十回裏、東洋大姫路は二死一、二塁の状況で、4番の安井浩二主将が右翼にサヨナラ本塁打を放ち、勝負を決めました。
梅谷馨監督やナインらが深紅の優勝旗を姫路市へ持ち帰ると、市民らは熱狂に包まれました。祝勝パレードと優勝報告会を見ようと、13万人もの人々が姫路駅前の大手前通りや大手前公園を埋め尽くしたのです。
