田中碧選手、輪島塗のレガースでW杯へ
サッカーのワールドカップ(W杯)北中米3カ国大会に臨む日本代表に、能登半島地震の被災地と深い絆を結んだ選手がいる。MF田中碧選手(27)=リーズ、川崎市出身。2度の石川県輪島市訪問をきっかけに、輪島塗職人が手がけた漆塗りのレガース(すね当て)を着用し、決戦のピッチに立つ。
被災地と共に強く高く飛ぶ
「自分たちが一生懸命戦って、勇気じゃないですけど、そういうものを受け取ってもらえたら」。事前合宿地のメキシコ・モンテレイで5日、田中選手は被災地に思いを寄せた。
3月に完成した特注レガースを持参。日本サッカー協会のシンボル・八咫烏と、伝統と継承を意味する鳳凰が描かれている。早ければ日本時間15日の初戦で初披露する。田中選手は「被災地と一緒に強く高く飛んでいきたい」と、復興への願いと自身2度目の大舞台での飛躍を重ねた。
輪島塗職人との出会い
制作したのは輪島市の田谷漆器店。震災で本社や倉庫が倒壊し、商品を近所の小学校に仮保管していた。校舎の公費解体に伴い商品移動が必要となった昨年7月、田中選手が搬出作業を手伝った。
2024年5月に初めて輪島を訪れた際は、朝市通りを巡り、輪島中のサッカー部員とボールを追い、子どもたちを元気づけた。被災者に寄り添う姿勢に、代表の田谷昂大さん(35)は「できることはやりたいという気持ちを感じた。ありがたかった」と振り返る。
漆塗りの意味
小学校2階からの搬出作業は3時間に及んだ。合間に輪島塗の魅力を説明していると、田中選手からレガース制作の依頼があった。田谷さんは「漆を塗って意味があるものにしか塗らない」という信条を持ち、当初は必要性を見いだせなかった。しかし、田中選手の「輪島塗の技術をアピールしたい。周りの選手にも漆器の良さを感じてもらいたい」という熱意に心を動かされた。
田谷さんはW杯で輪島塗に注目が集まることを期待する一方、「田中選手だから作った。商品化はしない」と断言。現地には行けないが、能登に思いを寄せる司令塔を全力で応援する。



