タイの子どもたちにソフトボールの魅力を伝える静岡県出身の23歳女性
タイの子どもたちにソフトボールを伝える23歳女性 (10.04.2026)

タイの子どもたちに体を動かす喜びを届ける静岡県出身の若き指導者

2025年春に中京大学を卒業した佐藤はづきさん(23)=静岡県沼津市出身=が、子どもの約8割が運動不足とされるタイで、ソフトボールの普及活動に取り組んでいる。国際協力機構(JICA)を通じて派遣された佐藤さんは、技術指導だけでなく、スポーツを通じた楽しさや主体性の育成にも力を注いでいる。

強豪大学の経験を海外で生かす決意

佐藤さんは全国屈指の強豪として知られる中京大学のソフトボール部出身で、2025年8月にタイへ渡った。中京大学はタイのソフトボール協会と協定を結び、競技の強化を支援している。佐藤さんは「海外で競技経験を生かせることに魅力を感じた」と語り、主に中高生を対象に指導を行っている。また、2026年秋の愛知・名古屋アジア大会にタイ代表として出場する学生や会社員らの指導も担当し、大会への同行も予定されている。

タイにおけるスポーツ環境の課題

タイのソフトボール競技人口は約3000人と限られており、普及が進んでいない現状がある。佐藤さんは子どもたちにゴロの捕球方法やキャッチボールなど基礎から丁寧に教え、練習にゲーム性を取り入れることで意欲を引き出している。「子どもたちは面白くした方が積極的に練習してくれる」と工夫を語る。

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タイオリンピック委員会のアドバイザーを務めるソフトボール協会のヨッサクライ会長は、「タイでは学校が終わると塾に行く子が多く、スポーツをする機会が少ない。そのため試合も限られ、予算も十分に確保できない」と課題を説明する。貧しい家庭では道具を揃えることが難しく、家の手伝いを優先せざるを得ないケースもある。

深刻な運動不足と国際比較

タイ身体活動知識開発センターによると、タイの5~17歳のうち、世界保健機関(WHO)が推奨する週420分以上の身体活動を行っているのはわずか20%に留まる。一方、日本では小学生男子の48%、女子の26%が基準を満たし、中学生になると部活動の影響で男子75%、女子55%に増加する。この差は、スポーツ環境の整備度合いを如実に示している。

日本スポーツ協会スポーツ科学研究室の青野博室長は、「スポーツは社会性や自信を育むことにつながる」と指摘し、運動習慣の重要性を強調する。さらに、「大人たちがスポーツの意義を理解し、子どもたちに体を動かすことが楽しいという経験を届けることが大切」と述べ、佐藤さんの活動を評価している。

子どもたちの主体性を育む指導

佐藤さんが指導する学校には他の部活動もあるが、活発に活動している様子は少ない。タイで人気の高いサッカー部でさえ、週に3、4回の練習程度という。佐藤さんはそんな環境の中、ソフトボールの魅力を伝えるため、ノックの本数を決めるなど遊び心のあるメニューを考案している。

指導を受けているティータワットさん(17)は、「技術の勉強になって楽しい」と感想を語り、佐藤さんの指導に熱心に取り組んでいる。佐藤さん自身も「教えたことをできるようになってくれると、すごくやりがいを感じます」と笑顔を見せる。

来年8月までの任期で目指すもの

佐藤さんの任期は2026年8月まで続く。「自分がいなくなった後もみんなに競技を続けてもらうよう、子どもたちの主体性を育てていきたい」と語る佐藤さん。タイの子どもたちにソフトボールの技術だけでなく、スポーツを通じた喜びと成長の機会を提供し、現地のスポーツ文化の醸成に貢献しようとしている。

静岡県出身の若き指導者の挑戦は、国際協力の新たな形として、スポーツの持つ力を改めて示す事例となりそうだ。

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