逮捕から5年後の起訴、妻殺害事件で異例の捜査経過 母は墓前に「頑張ろうね」
逮捕から5年後の起訴、妻殺害事件で異例の捜査経過 (23.03.2026)

逮捕から5年後の起訴、妻殺害事件で異例の捜査経過

2020年11月に東京都国立市の自宅アパートで発生した妻殺害事件で、高張潤被告(49)が殺人罪で起訴された。逮捕から起訴までに5年を要した異例の経過が明らかになった。事件から5年後の2026年3月、亡くなった妻の母親が報道各社の取材に応じ、捜査の長期化について「やっとスタートにたどり着いた」と心境を語った。

母親「自ら落ちることは絶対にあり得ない」

起訴状によると、高張被告は2020年11月29日、都営アパート9階の自室で、妻の麻夏さん(当時41歳)の首を絞めた上、ベランダから投げ落として殺害したとされる。東京地検立川支部は被告の認否を明らかにしていない。

捜査関係者によると、事件翌日に高張被告は自ら110番通報し、「妻は育児に悩んでいた。自殺だと思う」と説明したという。2021年2月に殺人容疑で逮捕された際も否認し、同支部は翌3月に処分保留で釈放した。

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取材に応じた麻夏さんの母親は、当時1歳だった孫娘を育てていた娘について「子どもが生まれたことをとても喜んでいた」と述べ、育児疲れを否定。「自ら落ちるってことは絶対にあり得ない」と強く主張した。

麻夏さんは「しっかり者で正義感が強い性格」で、高張被告は「おとなしい人」と思っていたという。暴力を振るわれたとも聞かなかったが、「仲がいい関係とは懸け離れていた。別れたいと伝えられていた」と語った。

引き取った孫娘が来月で小学生になるほどの月日が経過した。母親は「ずっと同じ気持ち。悲しいとか、悔しいとか、怒りとか」と感情を吐露。孫の成長が日々の支えになっているという。今月17日、警視庁の捜査員から起訴の報告を受けた後、日課の墓参りをし、麻夏さんに「頑張ろうね」と語りかけた。

処分保留から5年後の起訴はなぜ異例なのか

処分保留から5年後の起訴は極めて異例だ。刑事訴訟法では、逮捕・送検された容疑者について、検察官は最大20日間の勾留期間中に起訴するかどうかを判断する。証拠が不十分な時などは不起訴とするが、判断がつかない場合は釈放して捜査を続ける処分保留の手続きがある。

処分保留に期限の定めはなく、殺人罪の場合は公訴時効もない。しかし、「殺人事件で起訴まで5年かかるのは長い」と検察関係者は指摘する。

5年間にわたる処分保留について、水野智幸・法政大法科大学院教授(刑事法)は「釈放後も頻繁に容疑者を呼び出したり、有罪だと主張するような行動をとっていたりしたら問題だが、そうでないなら、手続き上あり得る」と説明する。

自殺か他殺かの見極めに時間を要した捜査

東京地検立川支部と警視庁は、直接証拠が乏しい中で、麻夏さんが自ら飛び降りたか、他殺かの見極めに時間を要した。捜査関係者によると、当時ベランダにいた人物を捉えた防犯カメラ映像はあったものの、不鮮明だった。

司法解剖の所見は転落による多発損傷。首を絞められた形跡はあったが、自殺と矛盾するとまでは言えなかった。

処分保留後も同支部と警視庁は複数の法医学者に意見を求め、通常の生存時の転落と比べ、臓器の出血量が少ないとの証言を得た。ベランダから飛び降りるシミュレーションも実施し、麻夏さんが倒れていた位置と照らし合わせた。

そうした結果から、麻夏さんが転落前に首を絞められて意識を失い、投げ落とされたと判断。他に殺害できる人間がいなかったとして高張被告の起訴に踏み切ったとみられる。

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この事件は、証拠が限られる中での捜査の難しさと、処分保留制度の実態を浮き彫りにした。家族にとっては5年間の待ち時間が長く、司法のプロセスに対する疑問を残す結果となった。