夏を目前に控え、熱中症予防に欠かせないエアコンの設置工事現場で、中東情勢の影響が深刻化している。石油化学製品の原料である「ナフサ」の供給不安定化により、エアコン設置に必要な資材が品薄となり、設置料金の値上げが避けられない状況だ。金銭トラブルを懸念する声も上がっている。
現場の実態:資材不足と価格高騰
東京都葛飾区でエアコン設置を請け負う「アイテック」の代表、平松功陽さん(43)は、5月19日の作業中に額の汗を拭いながら、深刻な状況を語った。「日に日に状況は悪化している。注文を断らざるを得ない状況が近づいている」と危機感を募らせる。
特に不足しているのは、エアコンと室外機を結ぶ配管を覆うカバーだ。よく使われるアイボリー色の製品は「ほとんどゼロ」という。また、配管同士をまとめる化粧テープや室外機の台座となるプラスチックブロック、配管を通した壁の穴を埋めるパテなども品薄状態が続いている。
平松さんは、品薄の要因として一部業者による買い占めを指摘する。「すっからかんになった店の棚を見て、焦った職人が他の店の商品を買い占め、それを知った別の職人がさらに買い占める。不安が不安を呼んでいる状況だ」と説明する。
需要増加と2027年問題
気象庁は6月から8月の平均気温が全国的に平年より高いと予想し、熱中症予防のためのエアコン使用を呼びかけている。さらに、2027年4月からエアコンの省エネ基準が厳しくなり、普及モデルの値上がりが確実視される「2027年問題」を控え、駆け込み需要も予想される。
平松さんによれば、例年7月が設置のピークだが、今年は5月時点で既に以前の7月に相当する注文が来ているという。移動に使う車のガソリン代は政府補助があるものの年初から高止まりし、資材高騰も加わって、設置料金は数カ月前より約2割上乗せせざるを得なくなった。「周りの業者も同じ対応を取っており、消費者の負担は避けられない。今が値上げの頭打ちかどうかも分からない」と語る。
業界の不安と政府の対応
ナフサを巡って政府は「総量は足りている」と繰り返し、社会不安の沈静化を図っている。しかし、平松さんは「まだ5月の段階で資材の在庫状況がこれでは厳しい。夏を越えられないのでは」と不安を吐露する。
資材の供給側も先行きを見通せていない。東京都内の部品問屋で働く男性のもとには、在庫を問い合わせる電話が毎日かかってくる。業者たちはホームセンターや金物屋に片っ端から問い合わせているという。取引のなかった業者からの問い合わせも増えているが、5月半ば以降、メーカーからの仕入れは止まったまま。ある大手メーカーは5月初めに、ホースやパテなどの資材について「従来通りの供給が厳しい状況」と公表している。男性は「いつになったら解消するのか、もう先が見えない」と不安を隠さない。
消費者への影響と今後の見通し
エアコン設置代金の値上がりは避けられず、消費者の中には「ぼったくり業者が出てくる可能性」を心配する声も聞かれる。業者側も適正価格でのサービス提供に努めているが、資材不足が長期化すれば、さらに価格が上昇する恐れがある。政府の対応が注目される中、現場からは早期の供給安定化が切望されている。



