みちのく潮風トレイル、被災の記憶を歩く 住民とハイカーが紡ぐ復興の絆
みちのく潮風トレイル、被災の記憶を歩く復興の絆

みちのく潮風トレイル、被災の記憶を歩きながら復興の絆を紡ぐ

青森県八戸市から福島県相馬市まで、約1000キロに及ぶ長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」が、国内外から訪れるハイカーを温かく迎え入れている。このトレイルは、東日本大震災の復興事業として環境省が整備し、2019年6月に全線開通。沿線の住民たちは、美しい自然とともに、震災の爪痕と教訓を伝える役割を果たしている。

震災伝承館「潮目」で命の尊さを語り継ぐ

岩手県大船渡市三陸町越喜来地区では、地元の建設会社を営んでいた片山和一良さん(74)が、2012年に私費で震災伝承館「潮目」を開館した。この建物は、震災がれきを建材に使用したカラフルな平屋で、名称には人々が出会う拠点にしたいという思いが込められている。特に目を引くのは、別棟の屋根として使われる非常階段だ。15年前の津波で、旧越喜来小学校の児童ら約80人がこの階段を使って高台へ逃れ、命を救われた。片山さんは「多くの命を救った功績ある物として、後世に残したい」と語り、処分予定だった階段を譲り受けた。

伝承館では、地域の高齢者らがハイカーと交流し、震災体験を語り継いでいる。昨春、膵臓がんが見つかった片山さんは「この先どれくらい続けられるかわからないが、震災の教訓を伝えながら、にぎわいも創出したい」と前向きに活動を続けている。

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外国人ガイドが「いま」を伝える役割

オーストラリア出身の階ケイティさん(41)は、日本への留学を経て震災翌年に岩手県へ移住し、外国人向けツアーを専門とする「THREE GOATS」のガイドとして活躍している。ツアーでは、東北の自然や歴史に触れながら、被災した住民との交流プログラムを提供。米国や豪州などから年間100人以上が参加しており、ケイティさんは「外国人だからこそできることもある」と力を込め、「いま」を伝えることに強く意識を向けている。

無償支援でハイカーと住民が支え合う

宮城県南三陸町の富樫信雄さん(61)は、トレイルの魅力にとりつかれて2年前に移住し、ハイカーに宿泊場所や食事を無償で提供している。沿道の爪痕から、震災遺構のような説明板がなくても「歩けばわかる」と語る富樫さんは、神戸市で生まれ育ち、1995年の阪神大震災で被災した経験を持つ。「一口に被災者と言っても、被害の大きさはそれぞれ違い、身近な人には言いづらいこともある。一期一会だから話せることもあるんちゃうかな」と述べ、住民とハイカーが支え合う存在になっていると感じている。

トレイルの魅力と復興の歩み

みちのく潮風トレイルは、東日本大震災の復興事業として整備され、ウミネコの飛来地として知られる蕪嶋神社(八戸市)、奇跡の一本松(岩手県陸前高田市)、景勝地の松川浦(相馬市)など、多様なスポットが点在する。沿線住民の取り組みを通じて、防災意識の向上と地域交流が深まり、復興の歩みが続いている。

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