災害公営住宅の自治会が岐路 国支援終了で「伴走支援」制度整備を要望
東日本大震災の発生から15年を前に、岩手県内の災害公営住宅で暮らす住民らのコミュニティ維持が重大な岐路に立たされている。復興支援を支えてきた国の「第2期復興・創生期間」が今年度末で終了するためで、各地の自治会は県や地元自治体に対し、専門的知見を持つNPO職員などによる「伴走支援」の実現を強く求めている。
盛岡市の住民が要望書を提出 高齢化で担い手不足深刻
「災害公営住宅の住民は出身も環境も異なる。コミュニティ維持のため、支援をお願いしたい」。盛岡市の災害公営住宅「県営南青山アパート」(99戸)のアパート会、日向久美子会長(76)ら住民3人は16日、市役所を訪れ、中村一郎副市長に要望書を手渡した。
2021年に入居が始まった南青山アパートでは、被災者64世帯108人(1月末現在)が生活を送る。敷地内には支援拠点「青山コミュニティ番屋」が置かれ、市から委託を受けた「もりおか復興支援センター」の職員5人が常駐。郷土料理を囲む食事会やボウリング大会といったイベント企画に加え、高齢者の見守りなど、約5年間にわたり支援を続けてきた。
市によると、支援センターとコミュニティ番屋の年間約5400万円(25年度)の活動費、人件費などには、国の「第2期復興・創生期間」(21~25年度)に伴う復興財源が活用されてきた。期間終了により、支援がなくなることから、両者の活動は3月末で終わる見込みとなっている。
要望書では、2人程度の支援者による「伴走支援」を求めた。地域の会議や行事、打ち合わせに出席し、3年以上の助言などを行うほか、自治組織の役員を担う人材育成や、住民が運営に参加できる仕組みづくりを担うとした。日向会長は住民の高齢化で役員の担い手不足が深刻な状況だといい、「これまでは運営が外部に頼りきりだった。支援を受け、将来的に自立できる態勢を整えたい」と語る。
山田町でも要望活動 高齢化率7割超で専門的支援が必要
山田町では9日、町内の災害公営住宅「山田中央団地」など2自治会の代表者ら8人が町役場を訪問。要望書では伴走支援の制度を整備し、県と協力して実施することなどを求めた。
自治会の泉沢和嘉子会長(69)によると、高齢の入居者が7割を超え、若い世代を交えた自治会運営が課題になっているとし、「専門的な知識を持つ人の支援は引き続き必要だ」と訴える。佐藤信逸町長は、新年度以降も自治会に支援員を置く考えを示し、「県と協力しながらできる限りの支援をしていきたい」と力を込めた。
県内で要望活動相次ぐ 県は新事業費400万円を計上
県内では第2期復興・創生期間の終了が迫った1月以降、要望活動が相次いでおり、19日には大船渡市にも要望書が提出される予定だ。
県は新年度当初予算案で、災害公営住宅の自治会活動の活性化に向けた事業費として新たに400万円を計上。支援実績がある専門家らがアドバイザーとなり、市町村へ知見の提供などを行う見通しである。
専門家が指摘する課題 自治会支援の仕組み整備が急務
被災地コミュニティーの形成支援に関わる岩手大学の船戸義和客員准教授は、各地の住民が集まる災害公営住宅は地域づくりの基盤が弱く、自治組織の役員らの負担が重くなっていることが課題だと指摘する。「市町村でも自治会を支援する職員が不足している。県全体として自治会や現場で働く支援員らを支える仕組みが必要だ」と強調している。
東日本大震災から15年が経過し、復興支援の新たな段階を迎える中、災害公営住宅のコミュニティ維持は、住民の自立と地域の持続可能性を左右する重要な課題となっている。専門家による継続的な「伴走支援」制度の整備が、高齢化や担い手不足に直面する自治会の未来を支える鍵となるだろう。