高齢障害者の新たな働き方「D型サービス」飛騨市が実証へ 生活支援と就労の両立目指す
障害者が通う就労継続支援B型事業所において、加齢による作業能力の低下を理由に支援を受けられなくなる人々の受け皿確保が深刻な課題となっている。身体機能の衰えが早いとされる障害者をサポートするため、岐阜県飛騨市は2026年度に軽作業と生活支援を両立させる市独自の「D型サービス」の実証事業を開始する。「働くデイサービス」のような環境を目指し、市は実証の成果を国に提言して制度改革を求める方針だ。
高齢化が進む障害者施設の現状と課題
市からの委託で実証を行うのは、福祉サービス事業所「ピース」(同市神岡町)。飛騨市は著しい高齢化が進んでおり、ピースでB型サービスを利用する知的障害者や精神障害者ら13人のうち、半数近くを50代から70代が占めている。作業能力の衰えは工賃の減少や意欲の低下だけでなく、事業所の収益減にも直結するのが実情だ。支援対象から外れ、引きこもりがちになる障害者は全国でも後を絶たないという。
厚生労働省の補助金を活用した研究によると、知的障害者は健常者に比べて約10年早く身体機能が低下し、40代や50代から老化の兆候が見られる。日常生活をサポートする自立訓練事業所がない飛騨市のような地域では、作業能力が低下した障害者をB型で受け入れられなくなった場合、介護保険サービスの対象となる65歳まで支援の枠から外れてしまう問題がある。
「D型サービス」の具体的な内容と狙い
この「隙間」に陥るのを防ぐため、ピースでは軽作業に加え、高齢期に心身が衰弱する「フレイル」の予防や生活指導の視点を取り入れた支援策を実証する。日常生活の安定を最優先に、食事や睡眠の指導を徹底。体操や認知症予防プログラム、アートの創作活動などを組み合わせ、働く意欲を高めつつ身体機能と生活能力の維持向上を図る計画だ。
障害者の家族会が原点であるピースでは、介護サービスに移行する利用者の精神的負担も考慮し、B型での支援が本来は難しい人も積極的に受け入れてきた。奈木桂子施設長(63)は「人生を一貫して障害福祉の枠組みで支援できる制度が必要です。そこに安心感が生まれ、社会的孤立を防ぐ手だてになります」と指摘する。
市独自の取り組みと今後の展望
飛騨市は2025年度に、B型利用者の能力や特性に応じて作業療法士が支援する「C型サービス」を独自に実証する予定。「D型」はその続く位置付けとして、デイサービスの意味も含めて名付けられた。関係者は「障害者が社会から孤立しない支援を実現したい」と見据えている。
就労継続支援B型とは、病気や障害があって一般企業で働くのが難しい人に対し、雇用契約を結ばずに就労機会や生産活動の場を提供する障害福祉サービス。利用者は障害や体調に合わせて通所し、福祉的支援を受けつつ、軽作業の対価として工賃を受け取れる。雇用契約を結び、最低賃金を保障する「A型」もある。