デリシアに公取委が警告 取引先従業員を無償で商品陳列させ優越的地位乱用の恐れ
公正取引委員会(公取委)は2月26日、長野県内でスーパーを展開するデリシア(本社:長野県松本市)に対し、取引先の業者に無償で従業員を派遣させて商品陳列などをさせたことが独占禁止法違反(優越的地位の乱用)に当たる恐れがあるとして警告を出した。公取委が同県内で優越的地位の乱用を理由として警告以上の措置を取るのは初めての事例となる。
長期間にわたる無償労働の実態
公取委の調査によると、デリシアは遅くとも2022年4月1日から2025年7月6日までの期間、店舗の改装や売り場の変更を行う際に、商品の納入業者に対して従業員の派遣を要求。人件費や交通費を一切支払うことなく、商品の陳列作業を手伝わせていたことが明らかになった。
デリシアは長野県内でスーパーなど約60店舗を展開しており、このうち17店舗において約180社の納入業者から延べ約1100人の従業員が無償で作業に従事していた。公取委の担当者は「昔から続いていたあしき商慣習のようなものだった」と指摘し、長年にわたる慣行が背景にあったとみている。
請求書フォーマットはあるものの実際の請求はなし
興味深い点として、デリシアが業者に派遣を求める際に送付していた文書には人件費を支払う旨が記載されており、請求書のフォーマットも添付されていた。しかし、実際に費用を請求した業者は一社も存在しなかったという。
公取委は、業者側が「請求すれば今後の取引に影響が出るのではないか」といった不安を抱いていたため、実際の請求に至らなかったと分析。納入業者が取引先を容易に変更することが難しい状況を踏まえ、デリシアが優越的地位にあると判断した。
公取委「非常に悪質」と厳しい指摘
公取委の担当者は今回の事例について、「人手不足で、人件費も高騰している中で取引先の従業員に作業させているにもかかわらず費用を支払っておらず、非常に悪質だ」と厳しく批判。社会的な労働環境の課題が深刻化する中での行為であることを強調した。
一方で、デリシアが公取委の調査を受けて2025年7月7日に業者への人件費支払い方針を自主的に決定したこと、再発防止に向けたコンプライアンス(法令順守)体制の整備を約束したことなどを考慮し、行政処分ではなく警告措置に留めた。
地域経済への影響と今後の展開
この警告は、地方経済において大規模小売業者と中小納入業者間の力関係に焦点を当てた重要な事例となった。公取委は今後も同様の商慣習がないか監視を強化する方針を示しており、地域ビジネスにおける公正な取引環境の確保が求められている。
デリシア側は公取委の指摘を真摯に受け止め、コンプライアンス体制の徹底と適正な取引慣行の確立に努めるとしている。長野県内の小売業界において、この事例が他の企業への波及効果をもたらすか注目が集まっている。



