私立小学校教員の自殺を労災認定 休憩時間ほぼ「ゼロ」と判断が一転
東京都町田市にある私立玉川学園小学校の男性教諭(当時39歳)が2018年に自殺した問題で、休憩が取れず時間外労働が月98時間に及ぶ長時間労働などが原因だったとして、労災が認められたことが明らかになった。国は当初の判断を修正し、休憩時間がほぼゼロだったと認定しており、子どもの見守りなどで休憩が取れない教員の勤務実態を認める画期的な事例となった。
「1日の休憩時間ゼロ」44%の調査も 終わらない教員の長時間労働
労災認定は2025年10月28日付。遺族によると、男性教諭は2001年に同学園幼稚部の教諭として採用され、2017年から小学部に異動。1年生の担任を務めていた2018年7月、保護者会後に行方不明になり、翌年に遺体で発見された。
八王子労働基準監督署町田支署は当初、死亡直前の時間外労働を月61時間と算出し、労災と認めなかった。これに対し遺族は2024年5月、労災認定を求めて提訴していた。
遺族側「実態に合致していない」 裁判で争点となった休憩時間の実態
訴訟では、男性教諭が始業時間前や休憩時間中にも実質的に労働をしていたかが主要な争点となった。遺族側は、正午からの1時間を休憩時間とする学園の服務規程について「昼休みは児童との給食時間にあてられ、午後0時45分からは5時間目が始まるため、実態に合致していない」と強く指摘。「休憩時間にはあたらない」と主張していた。
学校関係者や保護者らの証言をもとに、始業時刻前の勤務や持ち帰り残業も労働時間にあたるほか、全員が集まれる職員室がないため、教室内の机で常に児童を見守ることを要求されるなど、過酷な労働環境が詳細に訴えられていた。
国が自ら判断を修正 再調査で月98時間超の時間外労働を認定
注目すべきは、国が昨年10月になって、判決を待たずに自ら判断を修正し、労災と認定した点である。再調査では、始業から終業まで拘束時間のほぼすべてを労働時間と認定。時間外労働は月98時間を超えたことが明らかになった。
遺族代理人の篠原靖征弁護士は「休憩時間が実質的にゼロだと認定されるのは極めて珍しい事例だ」と語った。同支署は「個別の事案についてはコメントできない」としている。
専門家「教員特有の労働実態を踏まえなかった」 初期調査の不備を指摘
教員の過労死問題に長く取り組んできた松丸正弁護士は「労働基準監督署は当初、早出や休憩時間など教員特有の労働実態を十分に踏まえなかったのではないか」と指摘する。
「訴訟の中で再検討した結果、労災認定基準を満たしていると判断したということだろう。最初にきちんと調査していれば、遺族は7年間も悩まずに済んだはずだ」と述べ、初期調査の不備を批判した。
玉川学園広報課は「学園のコンプライアンス方針などに基づき、今後も検証を続けていく」とコメントしている。
この事例は、教員の長時間労働が社会問題化する中で、休憩時間の実態が厳しく問われる転機となった。全国的に「1日の休憩時間ゼロ」と答えた教員が44%に上る調査結果もあり、教育現場の労働環境改善が急務となっている。



