高校の掲示ミスで指定校推薦機会を喪失、卒業生への賠償判決が確定
志望大学への指定校推薦が、学校側のミスによって得られなかった――。大阪商業大学高校(東大阪市)を卒業した男性(19歳)が、学校側に慰謝料など220万円の損害賠償を求めた訴訟において、大阪地方裁判所の黒田香裁判官は44万円の支払いを命じる判決を下し、双方が控訴しなかったため判決が確定した。学校側の不手際により「他の受験先の選考を受ける機会が失われた」ことが権利侵害と判断された。
希望を裏切られた高校生活と突然の挫折
訴訟記録などによると、男性は2021年4月に大阪商業大学高校に入学。当初から指定校推薦を意識し、定期テストに力を入れ、生徒会やボランティア活動にも積極的に参加していた。指定校推薦は、大学が特定の高校に推薦枠を割り当てて募る選抜方法であり、一般的に校内選考では成績や学習態度、課外活動が総合的に評価される。
男性が高校3年生だった2023年8月末、校内で推薦枠がある大学と募集要項の一覧表が掲示された。男性は府内の工業大学を第1志望とし、9月4日に校内選考用のエントリーシートを提出。5日後には学校から推薦が決まったとの通知を受け、喜びに包まれた。
しかし、その喜びはつかの間だった。10月上旬、担任教員が工業大学の出願要件を確認したところ、男性が履修していない「数学3または物理」が必修科目となっていることに気づき、男性が出願資格を満たしていないことが判明した。校内で掲示された一覧表は、作成した教員のミスにより、必修科目の要件が記載されていなかったのである。
学校側の対応と訴訟への発展
学校では1次募集の後、推薦枠の空き状況に応じて2次募集を受け付けていたが、この時点で既に2次募集は締め切られていた。その後、男性は別の大学に指定校推薦で合格したものの、「希望した進学ができなかった」として、卒業式を終えた2024年3月に提訴に至った。
訴訟において、男性側は、第1志望に進学できるとの期待を裏切られたことに加え、学校側が記載漏れに10月まで気づかなかったため、第2志望の推薦を受ける機会も奪われたと主張。「精神的な苦痛を受けた」と訴えた。
一方、学校側は、第1志望の推薦については男性がそもそも要件を満たしておらず、「記載漏れで第1志望を受験する機会を喪失したわけではない」と反論。第2志望に応募していても、男性より評定が高い生徒がおり、「推薦を得られたとは限らない」とした。
裁判所の判断と賠償命令
2025年12月の地裁判決で、黒田裁判官は、男性が第1志望に推薦入学できた可能性はなく、第2志望の推薦は必ずしも得られていたとは言えないと指摘した。しかし、記載漏れがなければ、他大学の推薦を得られた可能性は十分にあったと述べた。
その上で、「正しい情報に基づいて受験先を選び、選考を受ける機会を失ったこと自体が権利・利益の侵害に当たる」と判断。「高校3年生にとって進学先の選択は重大な関心事で、精神的苦痛は軽くない」と述べ、賠償を命じた。
当事者の声と学校の対応
男性は本人尋問で、訴訟を起こした理由を「後輩に同じ経験をしてほしくない」と述べた。判決後の取材では、「将来を大きく変えられた結果に見合わない賠償額だが、二度と同じ事が起きないなら、訴訟をした意味はあった」と語った。
大阪商業大学高校は「判決を真摯に受け止め、再発防止に取り組む」とコメントした。
指定校推薦の現状と重要性
指定校推薦は、一般受験と違って面接や小論文が中心で、高校3年の12月までに合格が決まることから、総合型選抜と合わせて「年内入試」といわれる。主に私立大学が推薦枠を設けており、文部科学省によると、2024年度に大学進学した人の約2割(約11万5000人)が利用し、ここ数年は12万人前後で推移している。進路決定において重要な役割を果たしていることが伺える。