歌人・若山牧水の母校が149年の歴史に幕 児童減少で閉校へ
宮崎県日向市立坪谷小学校が、児童数の減少に伴い、3月末をもって閉校となる。この小学校は、著名な歌人である若山牧水(1885~1928年)の母校として知られ、149年にわたる長い歴史を刻んできた。閉校式典が2月22日に開催され、在校生である6年生2人をはじめ、地域住民や市関係者らが集い、節目の時を迎えた。
明治時代に開校 最盛期は400人近い児童が在籍
坪谷小学校は1876年(明治9年)に開校し、地域の教育の拠点として機能してきた。1950年代には約400人もの児童が在籍するなど、活気に満ちた時期もあった。これまでに1800人を超える卒業生を社会に送り出し、多くの人材を育成してきた歴史を持つ。
しかし、近年は少子化の影響で児童数が減少し、現在は6年生の2人だけが在籍している状況だ。この2人が今春に卒業すると、児童がいなくなるため、小中一貫校である日向市立東郷学園への統合が決定された。これにより、坪谷小学校としての歴史は幕を閉じることになる。
牧水を「先生」と呼び、顕彰活動に力を注ぐ
坪谷小学校の子どもたちは、1892年(明治25年)から1896年(明治29年)まで在籍した若山牧水を親しみを込めて「牧水先生」と呼び、日々の教育活動に取り入れてきた。具体的には、毎朝の短歌朗詠や、近くにある牧水の生家の清掃活動などを継続し、地域の文化遺産としての牧水の顕彰に努めてきた。
閉校式典では、市教育委員会の三樹和幸教育長が、牧水の歌「日向の国むら立つ山のひと山に住む母恋し秋晴の日や」を紹介。この歌には、坪谷への深い愛情と郷愁が込められていると説明し、地域や保護者、教職員への感謝の意を表した。
6年生2人が校旗を返還し、牧水の歌を朗詠
式典では、6年生の2人が校旗を返還する儀式が行われた。その後、2人は「歴史ある坪谷小最後の1年を過ごせたことを誇りに思っています」と述べ、牧水の歌「ふるさとの尾鈴の山のかなしさよ秋もかすみのたなびきて居り」を声を合わせて朗詠した。この瞬間、会場には静かな感動が広がり、149年の歩みに思いを馳せる参加者の姿が見られた。
三樹教育長は式典で、「小学校の歴史は終わるが、その精神はこれからも地域の中で生き続けます」と語り、閉校後も坪谷小学校の伝統が地域に根付くことを願った。地域住民からは、長年にわたる学校への支援と愛着が語られ、閉校への寂しさと感謝の気持ちが交錯する場面もあった。
少子化と地域の変化を反映 今後の課題も
坪谷小学校の閉校は、全国的な少子化の流れと、地域社会の変化を象徴する事例と言える。かつては活気あふれる学校だったが、人口減少の影響で存続が難しくなった。統合先の東郷学園では、新しい環境での教育が始まるが、坪谷小学校の歴史や牧水とのつながりをどのように継承していくかが今後の課題となる。
閉校式典を通じて、地域の結束と歴史への敬意が再確認された。坪谷小学校の149年の歴史は、多くの人々の記憶として残り、今後の地域づくりに活かされることが期待される。



