鉄道廃止か存続か…自治体首長の苦渋の決断、公共性の本質を問う
鉄道廃止か存続か、自治体首長の苦渋の決断

鉄道廃止か存続か、自治体首長の苦渋の決断が迫る

2026年3月、福岡県筑豊地域で、経営難が続く第三セクター鉄道、平成筑豊鉄道(福智町)の存続問題が大きな岐路に立たされています。沿線9自治体が今後のあり方を検討した結果、鉄道維持案を選択したのはわずか2町のみ。残る7市町村は、路線バス案または線路があった場所にバスを走らせるBRT(バス高速輸送システム)案を選びました。この決断の背景には、巨額の財政負担と公共インフラとしての鉄道の意義を巡る、首長たちの深い葛藤が横たわっています。

直方市長の寂しさと現実的な選択

BRT案の選択を表明した直方市の大塚進弘市長(73)は、「線路が消えていく決断をするのは、本当に寂しい思いがある。残せるものなら残したい」と心情を吐露しました。直方市は、筑豊地域の産炭地と積み出し港を結ぶ要衝として鉄道網が発達した歴史を持ち、「石炭と鉄道のまち」を標榜しています。市内に残る蒸気機関車を活用した町づくりを進める一方で、鉄道を維持しようとすると、市だけで年間2.5億円もの赤字負担を負わなければなりません。

市民や議員を対象に無作為抽出した2千人余りへのアンケートでは、回答した約700人の6割が路線バス案を支持。財政的現実と住民の意向を踏まえ、市は苦渋の決断としてBRT案を選択しました。この選択は、公共サービスを維持するためのコストと便益のバランスをどう取るかという、根本的な問いを投げかけています。

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筑豊地域の鉄道史と現代の課題

政治学者の原武史氏は、筑豊地域が炭鉱の発展とともに線路がいち早く各地に敷設され、貨物輸送量の多さから非電化ながら複線区間も少なくなかった歴史を指摘します。しかし、相次ぐ閉山とともに巨額の赤字を抱えるローカル線が増加し、添田線や漆生線のように廃止に追い込まれた路線も存在します。この地域の鉄道は、産業の興亡と密接に結びついてきたのです。

沿線自治体の判断は、単なる交通手段の選択を超えて、地域のアイデンティティや経済活動、さらには高齢化や人口減少といった社会課題にも直結しています。鉄道が消えれば、観光資源やコミュニティの絆が失われる恐れがある一方で、持続可能な財政運営を確保するためには、効率的な交通システムへの転換が不可欠です。

公共とは何か、問われる地域の未来

首長たちの苦渋の決断は、「公共とは何なのか」という哲学的な問いを浮き彫りにしています。鉄道のような大規模インフラは、利用者数が少なくても、地域の生命線としての役割を果たす場合があります。しかし、限られた財源の中で、どのサービスを優先し、どのように負担を分担するかは、民主主義のプロセスを通じて決められなければなりません。

BRT案を選んだ自治体は、鉄道の代替として、柔軟な路線設定やコスト削減を期待しています。一方、鉄道維持を選択した2町は、歴史的価値や将来の観光振興を見据えた判断を示しました。いずれの選択も、地域の将来像を描くための試行錯誤の一環と言えるでしょう。

この問題は、全国の地方都市が直面するローカル線存続の課題を象徴しており、国や鉄道事業者、住民との連携が求められます。筑豊地域の事例は、公共インフラの在り方を考える上で、貴重な教訓を提供しているのです。

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