データセンター建設を巡る法廷闘争が激化
千葉県印西市の千葉ニュータウン中央駅前におけるデータセンター(DC)建設計画をめぐり、近隣住民らが建築確認の取り消しを求める訴訟を千葉地方裁判所に提起した。住民側は、事業者が申請した建築確認が違法であると主張しており、DCに関する法制度の不備や事業者の説明責任の欠如に警鐘を鳴らしている。
駅前DC計画に住民の反発が高まる
計画されているDCは、千葉ニュータウン中央駅から徒歩約5分の場所に位置し、地上6階建てで高さ52.7メートル、延べ床面積約3万平方メートルの規模を有する。事業者である「印西ファイブ特定目的会社」は、建築基準法上の用途を「その他(データセンター)」と分類して建築確認を申請し、指定確認検査機関「日本ERI」がこれを認可した。
しかし、原告となった住民らは、DCが「工場もしくは倉庫」に該当すると指摘。同地区では市の条例により「工場」や「倉庫業を営む倉庫」の建築が禁止されており、日本ERIの確認は建築基準法に違反すると主張している。住民の一人、谷川宗和氏は「駅前でのDC建設が認められれば、都市計画上の悪しき前例となる」と危機感を表明した。
法制度の不備が紛争の背景に
訴訟の原告代理人を務める及川智志弁護士は、DCの法的定義が不明確である点を問題視。「現在の法制度ではDCが位置付けられておらず、住宅地への無秩序な建設が相次いでいる」と指摘する。住民側は、サーバーの冷却に伴う排熱や騒音、日照権の侵害、景観破壊などにより「健康で文化的な生活」が脅かされると懸念を強めている。
印西市では、藤代健吾市長が当初は建設に異論を唱え、住民運動団体が発足するなど「官民一体」の反対運動が展開された。しかし、市が事業者側と協議書を結んだことが明らかになり、市長が建設容認に転じたことで、住民の失望と怒りが高まり、今回の提訴に至った。
東京都がガイドライン策定に着手
DC建設を巡る紛争は首都圏で広がっており、千葉県白井市でも同様の訴訟が係争中だ。こうした状況を受け、DCの最大需要地である東京都が政策的対応に乗り出した。小池百合子知事は都議会で、DCを「デジタル都市を支えるインフラ」と評価しつつ、事業者と住民の円滑な対話を促すガイドラインの策定を表明。エネルギー効率を評価する認定制度の創設や、立地情報の早期把握体制の整備も進める方針だ。
専門家からは環境基準の整備を提言
国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、AI活用の拡大に伴い通信遅延が敏感な問題となるため、大都市圏へのDC集中が避けられない現状を指摘。紛争を未然に防ぐためには「DCに関する環境基準の制定や、国・自治体による指導監督が必要」と提言する。また、電力消費が大きいDCの「適正な数」を検討することも訴えている。
さらに、国際情勢を反映し、有事の際にDCが軍事目標となるリスクも指摘されている。中東でのドローン攻撃事例を受けて、日本国内でも住民の不安が増大している状況だ。
印西市の訴訟は、DC建設を巡る法制度の不備を浮き彫りにしており、今後の司法判断が注目される。住民側の主張通り、実態に即したDCの定義や規制の整備が急務となっている。



