腹話術で交通安全呼びかけ半世紀 福岡の福田夫妻が人形「たっちゃん」と共に歩んだ道のり
腹話術で交通安全半世紀 福岡の福田夫妻と人形「たっちゃん」

腹話術で交通安全を伝え続けて半世紀 福岡の夫妻が築いた独自の活動

「僕はたっちゃん。5歳だよ。道路は右左右を見て渡ろうね」――。福岡県大牟田市山下町に住む会社員の福田正春さん(75)は、膝の上に乗せた人形「たっちゃん」を使い、腹話術で子どもたちに交通安全を呼びかけている。妻の照子さん(73)とともに、保育園や公民館、時には高齢者施設を訪問するボランティア活動を、実に半世紀にわたって続けている。

独学で習得した腹話術と自作の人形「たっちゃん」

福田さんは中学卒業後、信号機器メーカー「信号電材」(大牟田市新港町)に就職。25歳の時、社会貢献がしたいと考え、人形劇グループに参加した。しかし、複数人で人形を動かして劇を演じるのは苦手だった。そこで一人でもできる腹話術に興味を持ち、図書館で本を借りて独学で研究を開始。人形の製作方法や操作方法、口の動かし方などを徹底的に学んだ。

指を使って口と目を動かせる装置を自作し、紙粘土で顔を作成して色を塗ることで、愛らしい人形「たっちゃん」が完成した。勤務先が交通事故防止を目指す信号機器メーカーだったこともあり、保育園などで交通安全教室を始めることに。活動を通じて知り合った照子さんと結婚し、夫婦で活動を継続することになった。たっちゃんは、顔を塗り直したり修復を重ねたりしながら、今も現役で活躍している。

月10回に増えた訪問活動と子どもたちの反響

現在、福田夫妻は月に2~3回のペースで、大牟田市や熊本県荒尾市、玉名市などの保育園や公民館を訪問。長年の実績が認められ、昨年からは会社に籍を置きながら社会貢献活動に専念できる環境が整った。さらに昨年7月からは、大牟田市内の小学校で授業の一環として活動できるようになり、ボランティアでの訪問回数は月に10回前後に増加している。

2月上旬、福岡県みやま市瀬高町の「太神保育園」で行われた交通安全教室では、横断歩道に見立てたマットが敷かれ、小型の信号機が設置された。最初に犬の人形との掛け合いで腹話術を披露し、一緒に歌を歌って園児たちを盛り上げた。照子さんと保育士が大きな紙芝居で交通ルールを説明すると、十数人の園児が安全確認をして手を上げながら横断歩道を渡った。

後半に登場した「たっちゃん」は、福田さんの「右見て、左見て。もう一度」という声かけに反対に動くなど、コミカルな動きで子どもたちの笑い声を誘った。佐田一仁園長は「素晴らしい腹話術だった。内容も楽しく学べるものだったので、子どもたちも喜んでいた。機会があれば、またお願いしたい」と評価した。

子どもたちの夢を育み、交通安全の輪を広げる

昨年11月に大牟田市立天の原小で行った教室では、お礼の手紙の中に「腹話術をやってみたい」という内容もあったという。福田さんは、子どもたちが興味を持てば、交通安全の活動に取り組むチームが学校内に作られ、上級生が新入生を指導するような未来を思い描いている。

「これからも妻と一緒に、事故のない安全な社会づくりに貢献していきたい」と福田さんは意欲的に語る。半世紀に及ぶ活動は、単なる交通安全啓発を超え、地域に根ざした温かい交流を生み出している。福田夫妻と「たっちゃん」の歩みは、これからも多くの子どもたちに交通安全の大切さを伝え続けていくに違いない。