障害者雇用支援事業所で150億円不正受給発覚、大阪市が指定取り消し処分
障害者雇用支援で150億円不正受給、大阪市が指定取り消し (27.03.2026)

大阪市の就労支援事業所で150億円の不正受給が発覚、指定取り消し処分に

大阪市福祉局は27日、障害者の就労支援を手掛ける「絆ホールディングス」傘下の四つの就労継続支援A型事業所が、計約150億円を不正に受給していたとして、指定取り消し処分を下したと発表した。この問題は、障害者支援制度への信頼を揺るがす深刻な事態として注目を集めている。

「36か月プロジェクト」と呼ばれる手法が不正の核心

不正の中心となったのは、絆ホールディングスが2020年以降に独自に導入した「36か月プロジェクト」と呼ばれる手法だ。このプロジェクトでは、障害者を事業所の運営スタッフとして雇用した後、半年ほどで離職させて利用者に戻し、再び雇用を繰り返すというサイクルを続けていた。同社はこれを「職場定着を目指す人材育成プログラム」と位置づけていたが、大阪市の監査では、「就労定着に向けた支援体制が構築できていると評価できない」と厳しく指摘された。

井上慎一運営指導課長は記者会見で、「利用者の障害特性や就労能力を考慮せず、事業所の主導で計画的に移行を繰り返し、過大に就労定着者を創出していた」と説明。この手法により、制度上の加算金を不正に受け取っていた実態が明らかになった。

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監査開始で事業所の運営が一変、利用者に負担強いる

監査が昨年8月に始まると、事業所の雰囲気は急変した。これまで「オンライン就労」として在宅勤務が中心だった利用者に対し、事業所は突然の通所を要求。その結果、事業所内は混雑し、トイレに列ができるなどの混乱が生じた。

ある20歳代の女性利用者は、「以前の職場でハラスメントを受け、適応障害と診断された。在宅勤務に魅力を感じて利用を始めたが、突然の通所で睡眠障害に陥った」と語り、生活再建への希望が打ち砕かれた思いを明かす。

「清掃一択」方針に利用者から悲鳴、労働組合に相談相次ぐ

昨年11月に過大受給疑惑が報じられた後、大阪市内の労働組合には利用者からの相談が絶えない。事業所は今年2月、「雇用を守り継続するため」として清掃業務を中心とする運営方針を打ち出し、「清掃一択」と通告するケースが相次いだ。

組合関係者によると、「めまいがあり肉体労働は難しいのに、選択肢がないと言われた」といった声が寄せられており、利用者の不安は高まっている。一部の職員からは、「会社は行政に指摘された部分だけを修正する姿勢で、根本的な改善を図る意思が感じられない」との批判も上がっている。

創業者の理念と現実の乖離、加算金目当ての疑いも

絆ホールディングスは2012年に設立され、障害児支援から事業を拡大。創業者は著書で「障害の特性を個性として評価し、輝ける社会を実現する」と理念を掲げていた。しかし、複数の元職員は「36か月プロジェクトは加算金目当てのビジネスのようだった」と証言しており、理念と実態の大きな隔たりが浮き彫りになった。

大阪市は、事業所が恒常的に定員を超えていたことや、個人情報が流出するなど、障害者総合支援法の運営基準に違反していた点も指摘している。

事業所閉鎖で利用者・職員に動揺、今後の支援が課題に

指定取り消し処分を受け、事業所は4月末に閉鎖される見込み。説明会では解雇が伝えられ、利用者や職員に焦りと驚きが広がっている。30歳代の女性利用者は「急な閉鎖で次の行き先に困っている」と語り、40歳代の男性職員は「運営手法に疑問を感じていたが、急な解雇には驚いた」と打ち明けた。

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大阪市によると、3月1日時点で利用者は334人、運営スタッフは1006人に上り、市や厚生労働省は相談窓口を設置するなどして支援に乗り出している。事業所側は約110億円の返還請求を受け、今後の対応を協議中だ。

この問題は、障害者雇用支援制度の不備を露呈させており、今後の制度改善が急務となっている。