リニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)建設が進む相模原市緑区の橋本駅周辺で、市が整備を計画する道路「大西大通り線」をめぐり、住民と市の対立が深まっている。約100棟の立ち退きを伴うこの事業について、市は2026年5月に県へ事業認可を申請した。住民らは「協議が途中だ」と反発を強めており、開業の見通しが立たない中での事業推進に疑問の声が上がっている。
認可申請で2030年4月工事開始を目指す
「多くの住民が納得していない。暴挙に強く抗議し、至急市長対話を求める」――地権者らでつくる「大西大通り線新設に反対する会」は27日、本村賢太郎市長宛ての抗議文を市担当者に手渡した。市は、リニア開業効果を生かすまちづくりを掲げ、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)相模原インターチェンジと橋本駅周辺のアクセス向上を目的に道路整備を計画。22日の都市計画法に基づく認可申請では、全体路線約920メートルのうち約360メートルを対象とし、用地測量や取得を進めて2030年4月の工事開始を目指すとしている。
住民の疑問と反対の声
反対する会は、構想段階で住民への相談がなかったこと、アクセス機能向上などの効果が乏しいこと、高齢者が多く移転負担が大きいことなどを問題視する。同会の桜井真理さん(70)は「疑問点が多く、市にまだまだ聞きたいことがある。認可申請は時期尚早で財産権や市民権を軽視している」と批判。リニア工事では各地でトラブルが発生し開業の見通しが立たない状況に触れ、「仮に開業できたとしても、そのときの社会や経済状況、少子化の進行などを踏まえて道路の必要性を判断すればいい」と話す。
市が2022年6月の住民説明会で道路の位置などを報告し、立ち退き計画が判明して以降、住民の反発が続く。市は説明会などで理解を求めてきたが、白紙撤回を求める声は絶えない。
市の立場と説明
市リニアまちづくり課の佐藤直樹課長は「人口減少が進む中でも人と企業に選ばれる魅力的なまちづくりを進める。必要不可欠な道路で、抗議は受けたが市の考えは変わらない」と説明。測量への同意件数や戸別訪問の反応などを総合的に判断し、申請のタイミングを決めたという。反対の会との対話日程を調整中だが、認可前になるかは不明としている。
JR東海との関係を疑う声も
国にリニア工事認可の取り消しを求める裁判の原告弁護団共同代表、関島保雄弁護士は、大西大通り線とリニアトンネル工事ルートがほぼ重なっている点を指摘。「JR東海は工事の円滑化のため地上の住民をどかしたい。民間企業では難しく、市が道路整備という公益事業の名目で立ち退かせ、便宜を図ろうとしているのでは」と疑念を表明。リニア工事は静岡工区をはじめ各地で遅れが生じており、「この先20、30年たっても完成しない状況に追い込まれるだろう。リニア開業を前提に道路整備を進める意味はない」と語った。
県都市計画課の担当者は認可申請に関し「個別のことはお答えできない」とし、認可時期は未定としつつ「申請では、市町村に2カ月くらいの期間を見込むように求めている」と説明した。



