岩手県大槌町で発生した山林火災は、発生から38日目となる29日、鎮火宣言が発表され、町民からは安堵の声が相次いだ。平成以降2番目の規模となる1600ヘクタール超を焼損した大火災は、ようやく終息の兆しを見せた。
鎮火宣言の経緯
29日午後1時から町役場で開かれた記者会見で、釜石大槌地区行政事務組合消防本部の駒林博之消防長は「14日以降、熱源が確認されていないことなどを踏まえ、過去の山林火災の経験から慎重に判断した」と説明し、鎮火に至った経緯を明らかにした。同日午前10時ごろ、平野公三町長らは県防災ヘリに搭乗し、約20分にわたって吉里吉里地区や小鎚地区の山林の消火状況を目視で確認。その後、午後1時に鎮火が宣言された。
平野町長は「暮らしの再建や観光業など経済の回復を進めながら、森林の復旧復興に取り組む」と強調し、今後の方針を示した。
町民の声
町民からは様々な思いで鎮火を受け止める声が聞かれた。延焼拡大が続いた沢山地区近くに住む町づくり団体代表の神谷未生さん(50)は「鎮圧後もヘリの音が聞こえると、東日本大震災直後の記憶がよみがえることが多かったので、やっと心が落ち着く」と安心した表情を浮かべた。
消火活動では海水を散水したため、ワカメ漁の自粛を余儀なくされた。延期されていたウニ漁は今月上旬から始まったが、山林火災の影響か水が濁り、海底のウニが見えづらい状況が続いている。吉里吉里地区の漁師倉本修一さん(57)は「町には一刻も早い森林の再生に期待している」と訴えた。
観光業にも影響が及んでいる。同町の宿泊施設「三陸花ホテルはまぎく」の岩鼻勇一郎営業課長(54)は「一安心だが、客足が火災以前には回復していない」と話す。火災の影響で5月の大型連休中のキャンセルが相次ぎ、客室の稼働率は半分以下に落ち込んだ。現在は7割程度まで回復したが、岩鼻さんは「町の観光支援策に期待したい」と語った。
消防団の尽力
消火活動に尽力した地元消防団は鎮火に胸をなで下ろした。町消防団第1分団第3部は鎮圧後も白煙を確認し、消火にあたった。林道などを巡回して山火事防止の広報活動を続けてきた上野典光部長(70)は「被害を最小限に抑えて鎮火を迎えることができ、使命を果たせてよかった。二度と山林火災を繰り返さぬよう、気を引き締めていきたい」と話した。
復旧・復興へ県が推進本部
鎮火宣言を受け、県は29日、達増知事を本部長とする復旧・復興推進本部を設置した。達増知事は政府が「局地激甚災害」に指定したことから、「国の支援をいただきながら、大槌町と連携し、一日も早い復旧・復興を実現できるよう取り組みを進める」とのコメントを発表した。



