「紀州のドン・ファン」事件 元妻の無罪判決が確定 大阪高裁も一審支持
2026年3月23日、大阪高等裁判所(村越一浩裁判長)は、「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家・野崎幸助さん(当時77歳)の急性覚醒剤中毒死をめぐり殺人罪などに問われた元妻・須藤早貴被告(30歳)の控訴審判決を言い渡した。高裁は、無罪(求刑無期懲役)とした一審・和歌山地方裁判所の判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。これにより、須藤被告の無罪が確定した。
事件の経緯と一審判決の概要
野崎幸助さんは2018年5月、和歌山県田辺市の自宅寝室で死亡が確認された。死因は急性覚醒剤中毒とされ、同年2月に結婚した須藤被告が、致死量を超える覚醒剤を飲ませたとして逮捕・起訴された。一審の和歌山地裁は、須藤被告が密売人から覚醒剤のような物を購入し、インターネットで「覚醒剤 過剰摂取」や「老人 完全犯罪」といったキーワードを検索していた事実を認めつつも、野崎さんが誤って自ら飲んだ可能性を完全に否定できないと判断し、無罪を言い渡していた。
控訴審での検察と弁護側の主張
昨年12月に行われた控訴審第1回公判では、検察側が新たな主張を展開した。須藤被告が野崎さんと財産目的で結婚したものの、離婚の意思を示されるなど「殺害の動機」があったと指摘し、一審判決の見直しを求めた。これに対し、弁護側は反論を繰り広げた。野崎さんは自ら覚醒剤を入手する能力があり、自分で摂取した可能性が残されている点を強調し、検察側がこの可能性を否定できていないと主張した。公判は即日結審し、判決が待たれていた。
大阪高裁の判断と社会的影響
大阪高裁は、一審判決の論理を踏襲し、証拠不十分として無罪を支持した。具体的には、以下の点を重視したとみられる。
- 須藤被告の動機や行動が認められるものの、直接的な殺意の証明に至らない。
- 野崎さん自身による覚醒剤摂取の可能性が排除できない。
- 検察側の主張する「完全犯罪」の計画性について、確実な証拠が不足している。
この判決は、刑事事件における疑わしきは罰せずの原則を改めて示すものとなった。事件は資産家の不審死として世間の注目を集め、裁判の行方がメディアで大きく報じられてきた。無罪判決の確定により、長年にわたる法廷闘争に一つの区切りがついた形だ。
一方で、遺族や関係者には納得がいかない面も残る可能性があり、今後の民事訴訟や社会的議論への影響が注目される。事件をめぐっては、覚醒剤の危険性や高齢者を標的とした犯罪の防止策についても改めて議論を呼ぶことになりそうだ。



