知床沈没事故公判で被告人質問開始 遺族「うそ偽りなく話して」と悲痛な訴え
知床沈没事故公判 遺族が被告人に「うそ偽りなく話して」

知床沈没事故公判で被告人質問が開始 遺族の悲痛な思いが法廷に響く

知床半島沖で2022年4月に発生した観光船「KAZU I(カズワン)」沈没事故をめぐる公判が、新たな局面を迎えています。業務上過失致死罪に問われた運航会社社長の桂田精一被告(62歳)に対する被告人質問が2日に始まり、事故への認識を直接問う審理が進められました。

遺族26人の供述調書朗読 法廷に広がる深い悲しみ

この日の公判では、午前中に検察官が乗客乗員の家族26人分の供述調書を朗読。突然の別れを強いられた遺族たちの悲痛な心情が法廷に響き渡り、重苦しい空気に包まれました。

「あの事故以来、心にぽっかり穴が開いた。人の命をなんだと思ってるんだ」。息子を亡くした男性は、検察官に対してこうした憤りの言葉を述べたと伝えられています。

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男性の息子は、交際中の女性にプロポーズするために知床を訪れ、カズワンに乗船していました。事故から5日後に遺体と対面した際、男性は「寒かっただろう。つらかっただろう。よく帰ってきてくれた」と声をかけ、ダウンジャケットをひつぎにかけて温めたといいます。

行方不明者の父親「知床を勧めなかったらと思うと胸が痛む」

現在も行方が分からない小柳宝大さん(当時34歳)の父親は、世界遺産を見たいと言った息子に知床を勧めたことを後悔しています。父親は検察官に対し、「『知床を勧めなかったら』と思うと胸が痛む」と心境を吐露。自ら知床の海に手をつけた時には「生きていることはないと絶望した」と明かしました。

一方、事故当日が誕生日だった交際相手の女性については、母親の調書で海岸で娘の名前を叫んだこと、遺体と対面できたのが約5か月後の9月15日だったことが述べられました。母親は娘のひつぎに結婚予定だった男性の写真を見せ、「やっと会えたね」と伝えていたことも明らかになりました。

被告人質問で説明の食い違いが浮き彫りに

午後から始まった被告人質問では、桂田被告に対する厳しい視線が注がれました。被告は証言台のいすから立ち上がって傍聴席を向き、頭を下げましたが、目を合わせないよう下を向く家族もいました。

質問の中で、被告のこれまでの説明との食い違いが浮き彫りとなりました。被告は当時、同社の運航管理者を務めていましたが、事故4日後の記者会見では「運航管理者は船長」と述べていました。この日の弁護人の質問に対し、被告は「(自分が)運航管理者と分かっていた。業務内容も理解していた」と淡々と答えました。

知床の海や天候に関する知識については、幼少期から海に出ていた経験から「『春や秋は荒れやすい』ことは人より知っている」と説明。「被告には海や船の知識はない」とする同業者や同社元従業員らの証言に反論する形となりました。

遺族が被告の態度に憤り「うそ偽りなく話してほしい」

法廷に足を運んだ遺族たちは、桂田被告の態度に憤りを隠しません。被告はこの日、弁護人の質問に笑いながら答えたり、消え入りそうな声で話したりする場面がありました。

小柳宝大さんの父親は、こうした被告の態度を見て「謝罪の言葉を信じることはできない。真実が語られているとは思えない」と感じたといいます。4日まで行われる予定の被告人質問では「うそ偽りなく話してほしい」と強く訴えました。

昨年11月の初公判で「法廷で私が話すべきことは誠実に話す」と語っていた桂田被告。多くの乗客家族が法廷に足を運び、その主張に聞き入る中、真実の解明が求められています。

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