1月に就任した福井県の石田嵩人知事が、原子力行政への対応を本格化させている。県内の原子力発電所を視察し、原発のトラブルを受けて県トップとしての情報発信にも取り組んだ。行政経験の不足が指摘される中、今後予想される使用済み核燃料の県外搬出を巡る問題でリーダーシップを発揮できるか、注目されている。(行田航、北條七彩)
原因究明と対策を求める
「運転中の原子炉が予期せぬ形で停止したことは、県民に不安を与えかねない。徹底した原因の究明と、対策を講じてもらう必要がある」
石田知事は22日の記者会見で、関西電力美浜原発3号機でタービンを覆うカバーが損傷し、蒸気漏れが起きたことで原子炉が停止したトラブルに関し、毅然とした態度で関電に求めた。
4月以降、関電の3原発や日本原子力発電の敦賀原発、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」を視察し、県内の3事業者の施設に足を運んだ。一連の視察後、「安全対策を講じられているか、自分の目で確認することができて非常に良かった」と率直な感想を報道陣に語った。
地方行政の実務経験が不足
栗田幸雄氏(2024年死去)、西川一誠氏、杉本達治氏の直近3代の知事はいずれも旧自治省出身だ。豊富な行政経験を生かし、県内原発を巡る国との交渉でも手腕を発揮してきた。
特に前知事の杉本氏は県総務部長や副知事の時代から原子力行政に深く関与してきた。2021年には知事として美浜3号機の再稼働に同意し、国内初となる原発の40年超運転に道筋を付けた。県幹部は「杉本氏以上に県の原子力行政の実情を知る政治家はいなかった」と明かす。
一方、石田知事は外務省職員出身で、地方行政の実務をほとんど経験していない。名城大の昇秀樹名誉教授(地方自治論)は「原発など長年の議論がある課題に向き合うのは誰でも簡単ではない。県庁という年功序列組織の中で、若い首長だとなおさらだ」と指摘する。県幹部は「(しばらくは)先代から受け継がれてきたレールに沿ってやっていくことになる」とみる。
重要局面の決断時期迫る
ただ、重要局面は迫りつつある。関電が計画する乾式貯蔵施設を巡る対応だ。県が関電などの事業者と結ぶ安全協定では、重要施設の設置変更などの際には知事の事前了解が必要で、乾式貯蔵施設の設置も対象だ。
県議会などは、乾式貯蔵を認めることで、使用済み核燃料がなし崩し的に県内に長期間とどめ置かれるリスクを懸念し、慎重に議論を重ねてきた。
こうした中、県が注視してきたのは、使用済み核燃料の主な搬出先となる日本原燃の再処理工場(青森県六ヶ所村)の動向だ。現在、原子力規制委員会の安全審査が続いている。
石田知事は原燃による審査会合での説明後、了解の是非を判断する考えを示している。原燃の増田尚宏社長は28日の記者会見で、「次回の審査会合で全ての説明を終わらせたい」と話した。会合は月1回程度開かれてきたことから、6月県議会中に決断のタイミングを迎える可能性がある。
識者の見解
原発と立地地域の関係に詳しい東洋大の井上武史教授(地方財政論)は次のように語る。「福井県の対応は国の原子力行政に影響を与え、他の立地地域にも手本となってきた経緯がある。現在は、立地県としてどういう地域を作るのか、将来の世代に方向性を示す段階にあり、少数意見や不安の声にも配慮しつつ、県民が納得できる説明をしていくことが知事には求められる」
乾式貯蔵施設とは
使用済み核燃料を専用の金属容器「キャスク」に入れて保管する施設。空気循環で冷却するため、プールで貯蔵する水冷式と異なり電力は不要で、キャスクに入れたまま輸送できるため、搬出がしやすい利点がある。



