和歌山県串本町沖で1890年に沈没したトルコの軍艦・エルトゥールル号の遺物33点が29日、奈良大による保存処理を経て、町に返却された。劣化が進んでいた遺物が補修、補強され、関係者らは「日本とトルコの友好の証しを、将来にわたって受け継いでいける」と喜んだ。
保存処理を施された遺物
遺物には、船の木片や、ロープ固定に使用されていたとみられる滑車(重さ10キロ)が含まれる。これらの遺物は、トルコの水中考古学者トゥファン・トゥランル氏らの調査団が、2007年から実施した海底調査などで引き揚げられ、町の施設で保管されてきた。しかし、海中に長期間沈んでいたため、細菌の影響で表面の劣化が進行。特に木材と金属を組み合わせた滑車は保存が困難で、適切な処理を施さなければひび割れや剥落が進む恐れがあった。
新たな保存処理技術
遺物の劣化を受け、奈良大の今津節生学長(文化財科学)が、自身の研究チームが新たに開発した保存処理法を提案した。この手法は、高温多湿に強く、金属をさびから守る効果を持つ糖類「トレハロース」の溶液を遺物に浸透、結晶化させることで強度を高めるもの。2024年1月から奈良大で処理を実施し、昨年12月に保存処理と補修を完了。経過観察を経て返却が決まった。
返却式と今後の展望
この日、町役場で遺物のお披露目があり、田嶋勝正町長、今津学長、トゥランル氏らが出席。田嶋町長は「(遺物は)ただの船の破片ではなく、日本とトルコの絆をつないでいくもの。保存処理をしていただいて感謝している」と述べた。今津学長は「(保存処理した遺物が)エ号の物語をより広く発信するための一助になれば」と語った。
返却された滑車と木片の一部は早速、町のトルコ記念館に展示された。トゥランル氏は「エ号の遺物はまだ多く海底に残っている。今後も町と協力して、海底調査を進めていきたい」と意気込みを語った。



