大学生が陥ったホスト詐欺の実態
2年前の春、東京都内の大学に入学した優奈(仮名)は、実家を離れて一人暮らしを始めた。サークルの先輩に誘われて新宿・歌舞伎町のホストクラブを訪れたのが、すべての始まりだった。1時間1000円の飲み放題という手頃な価格に惹かれ、ホストとLINEの連絡先を交換。デートを重ね、店に通うようになるまで時間はかからなかった。
「限定」「孤立化」「短期間」の三つの手口
公益社団法人「日本駆け込み寺」代表の玄秀盛氏(69)は、優奈のような女性を数多く見てきた。同団体は2002年の設立以来、悪質ホストによる女性への売春強要問題に約3000件対応している。玄氏は典型的なだましの手口として、「限定」「孤立化」「短期間」の三つを挙げる。
「君だけだよ」という甘い言葉や婚姻届を書かせることで「限定」の特別感を持たせ、家族や友人とのつながりを絶たせて「孤立化」させる。そして「短期間」で多額の売掛金を背負わせ、水商売で働かせて金づるにする。優奈は実家の家族に相談せず、数カ月後にはホストと同居。結婚までほのめかされていた。
心理学的に見る詐欺の共通点
名城大学教授の原田知佳氏(43)は社会心理学者として詐欺の研究を行っており、悪質ホストの手口と他の詐欺との共通点を指摘する。「今だけ」「君だけ」といった限定は投資詐欺やロマンス詐欺の典型であり、考える間を与えない短期間はあらゆる詐欺に通じる。原田氏が特に注目するのは孤立化だ。
特殊詐欺のマニュアルでは、警察官を装って電話をかけ、「事情聴取中は電話に出ないで」と指示。近くに家族がいれば、一人になって扉を閉めさせる。人は動揺すると指示に従いやすく、冷静な判断ができなくなる。緊急時には時間をかけて判断するより、指示に従う方が適切な場合が多い。火事場では「あっちに逃げろ」という声に従うだろう。これは人間が経験則で学び、進化の過程で刷り込まれた行動原理だ。詐欺師はそこに孤立化を加え、相手を意のままに操る。
だましの構造は古今東西同じ
玄氏は「だましの手口は古今東西、詐欺もホストも根本は同じ」と語る。「人間の性質を利用しているわけで、片足突っ込んだら、だまされずに済むわけがない」。優奈は「あの時はおかしかった」と振り返る。実家に届いた借金の督促状で窮状を知った親が駆け込み寺に相談し、自己破産を選んだ。初めてホストクラブを訪れてから半年間の出来事だった。



