原宿の国有地が10カ月の菜園に 住民の願いが生んだ「目に見えないギフト」
原宿の国有地が10カ月の菜園に 住民の願いが生んだ場所 (19.02.2026)

都市の空き地がふかふかの畑に 住民の願いが実現した10カ月

東京都渋谷区神宮前に、まるで取り残されたように存在する1500平方メートルの国有地。この土地が昨年4月から今年1月までの約10カ月間、地元の有志たちの手によって「原宿はらっぱファーム」という菜園に生まれ変わりました。やせて硬かった土は、コンポスト製の堆肥を入れることでふかふかの畑へと変化。そこで実ったのは野菜だけではありません。地域に育まれた目には見えない貴重な「ギフト」がありました。

散歩中の発見から始まった挑戦

JR原宿駅から表参道へ徒歩約15分の場所に位置するこの空地は、しゃれた店舗やマンションに囲まれた中にぽっかりと開いていました。「自然を真ん中にして、人がつながる場所を都心につくりたいとずっと思っていたんです」と語るのは、企画を主導した渋谷区在住の60代、安西美喜子さんです。

2020年に千葉県から引っ越してきた安西さんは、散歩の途中でこの広い空き地を目にし、「畑にできないかな」と考えました。しかし、そこはフェンスに囲まれ鍵のかかった国有地。「きっと無理よね」と思いながらも、「でも、もしかしたら…」という希望を捨てきれませんでした。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

諦めない行動が実を結ぶ

安西さんは生ごみや落ち葉などを堆肥化するコンポストのアドバイザーとして、一般財団法人都市農地活用支援センターに登録していました。同センターの役員にダメ元で相談すると、親切に協力を得ることができました。

その後、国有地を管理する関東財務局などに企画を説明して回り、渋谷区が間に入る形で調整が進みました。最終的に、安西さんが地域の仲間と設立した「都市農地と防災のための菜園協議会」が、国有地の管理を2025年2月から1年間受託する形で畑づくりが実現したのです。

多様な区画で広がる参加の輪

畑は木枠を設置し土を入れるところから手作りされ、利用者を公募したグループ菜園や、ふらりと寄った人も畑仕事を体験できる「みんなの畑」など12区画が設けられました。グループ菜園の利用者は、初対面同士で年齢や農作業の経験の有無などがばらばらになるように8人1組に編成。多様な背景を持つ人々が交流する場となりました。

コミュニティコンポストで生ごみ5トンを減量

大きな特徴となったのが、木枠で囲った大型コンポストの設置です。周辺の住民に呼びかけ、各家庭で小型コンポストを使って生ごみを堆肥化してもらい、たまったら大型コンポストに入れてもらう「コミュニティコンポスト」を導入。主に20軒ほどが参加し、約5トンの生ごみや雑草などを減量することに成功しました。

さらに、近くの青山学院大学の学生たちが「コーヒーメッセンジャー」として活躍。週1回、スターバックスコーヒー東急プラザ表参道オモカド店からコーヒーかす約10キロをもらい受け、大型コンポストに投入する活動を続けました。

0歳から80代まで約180人が集う場に

利用者は幼児の親を中心に、0歳から80代まで約180人に及びました。最終日の1月29日には30人ほどが集まり、「見えないギフトもいただいた」「大学でも畑をつくりたい」「子育てをした東京というふるさとに、いい土がほしい」などと和やかに感想を述べ合い、ファーム産のハーブティーで乾杯しました。

種はタンポポの綿毛のように広がる

安西さんは「1年で終わるのは本当に残念」と嘆きつつも、こう語ります。「血縁や職場のつながりが薄くなっている今、コミュニティーはより重要です。ここでまいた種が、タンポポの綿毛のように広がっていくといいな」

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

すでに、新たなコミュニティコンポストを計画している参加者も現れています。10カ月という限られた期間ではありましたが、この菜園が地域にもたらしたものは、単なる野菜の収穫をはるかに超える価値あるものだったのです。