母体保護法の不妊手術禁止規定をめぐる裁判 女性の自己決定権が焦点に
2026年3月14日、母体保護法が自発的な不妊手術を原則禁止する規定について、憲法違反を訴える裁判の判決が東京地裁で言い渡される。原告は20~30代の女性5人で、「産む・産まない」という個人的な選択に国家が介入することの不合理性を争点としている。
旧優生保護法から母体保護法へ 国家介入の歴史的連続性
歴史的に見ると、日本では国家による生殖への介入が続いてきた。障害者らへの強制不妊手術を認めた旧優生保護法の規定は、2024年の最高裁判決で「成立当時から違憲だった」と判断された。一方、その改正法である母体保護法は、自分の意思で行う不妊手術に厳しい要件を課し、原則禁止としてきた。
岩本美砂子・三重大学名誉教授(政治学・女性学)は、「『産んではならない』と『産めない体になってはならない』は正反対に見えるが、法律が介入する点では同じだ」と指摘する。この介入は明治時代から続くもので、妊娠・出産という極めてプライベートな事柄を国が制約してきた背景には、人口政策や社会的規範が深く関わっている。
原告の思いと社会への抵抗
原告たちは、不妊手術を「社会への抵抗」として位置づけている。杉田菜穂・大阪公立大学教授(社会政策)は、世界人口白書2021が掲げる「からだの自己決定権」に言及し、暴力や抑圧を怖れることなく、自分のからだと将来に関する選択をする力の重要性を強調する。
この権利は、女性の生き方を国家が縛る不合理性を浮き彫りにしており、「産まない」という選択が個人の尊厳とどう関わるかが問われている。裁判では、母体保護法の規定が憲法に保障された自己決定権を侵害しているかどうかが争われる。
専門家の見解と今後の展望
岩本名誉教授は、国家介入の歴史を振り返りながら、女性の体への勝手なジャッジが権利を損なう危険性を指摘する。彼女は、「介入は明治時代から続く問題で、現代でもその影響が残っている」と述べ、法律の見直しを訴える。
この裁判の判決は、ジェンダー平等と個人の権利に関する日本の法制度に大きな影響を与える可能性がある。関連トピックとして、強制不妊手術の被害者や、結婚と生殖をめぐる社会的圧力も注目されており、今後の議論の深まりが期待される。



