落合恵子さん、がんとの闘いを綴った体験記を出版
東京に雪が降った翌日、吉祥寺にある子どもの本の店「クレヨンハウス」で、落合恵子さんへの取材が行われた。入り口近くの鉢植えの花の前で写真を撮影すると、彼女はいとおしげに花に触れながら語った。「この花もね、日が当たると起き上がってくるのよ」と、自然の生命力に感銘を受ける様子だった。
小細胞肺がんの診断と入院生活
2023年の夏、78歳になった落合さんは小細胞肺がんと診断された。その後、入院生活を送り、抗がん剤治療や放射線療法を受けた経験を、新たな体験記にまとめた。この本では、病気を機に考えたことや、治療中の心情が詳細に記されている。
母子家庭で育ち、大学卒業後はラジオのDJとして活躍し、働く女性の先駆けとなった落合さん。多くの著書を執筆する傍ら、女性が自立して働く場を設けたいとの思いから、クレヨンハウスを設立した。病気になってからは、「ひとはひとり」であることをかみしめる大切さを強く感じたという。
病院での思いと自然への憧れ
落合さんは、病院の窓から外を眺める時間について語った。「世の中の2人に1人はがんになるなら、歩いている半分はかかるのかなと考えたりするんです」と、統計を身近に感じる瞬間があった。また、雨が窓を打つ様子を見て、「雨上がりの土の匂いをかぎたい」と思ったと明かし、自然への強い憧れを表現した。
さらに、「自分の中に沈み、心の底を足で蹴ったときに浮き上がることもあるんじゃないかな」と、困難な状況でも希望を見出す姿勢を示した。一方で、忙しく働く医師や看護師に質問するのをためらったり、長年オーガニックフーズを食べてきたため、病院で一律に出される食事に手が伸びなかったりしたことも告白した。
病院での「違い」の難しさと読書の力
落合さんは、「私は今まで、『みんな同じではなくてもいい』ことを書いてきた。でも、病院では『違うこと』が難しい」と感じたと述べ、医療現場での画一的な対応に戸惑いを感じた。また、人間と環境の問題に目を注いだレイチェル・カーソンのエッセーをはじめ、体と向き合う中で読んだ本についても触れている。
「読んだ本の一行でも二行でも帰る場所がある人は幸せです。読んだときの心の風景に出会えるし、変わる楽しみもある」と、読書が心の支えとなったことを強調した。
現在の状況と将来の希望
現在、落合さんの病気は小康状態にある。将来について、あの日が来たときは葬儀やお別れの会をせずに散骨したいという希望を語った。この体験記は朝日新聞出版から発売され、価格は1760円となっている。



