滋賀県の琵琶湖で、小型の養殖ウナギを放流すると大型に成長する現象を、近畿大学大学院農学研究科(奈良市)などの研究グループが科学的に証明した。これまで琵琶湖で大型ウナギが漁獲されることは知られていたが、そのメカニズムをデータで明らかにしたのは初めてという。
研究の背景と目的
ウナギは海で生まれ、川や湖などの淡水域で成長し、再び海で産卵する。琵琶湖には天然ウナギが淀川を通じて遡上していたが、1964年に天ケ瀬ダムが建設されたことで遡上が困難になった。そのため、養殖場で出荷サイズに達しなかった小型ウナギの放流が増加。しかし、放流後の成長過程や良好な成長の理由は不明だった。
調査方法
研究グループは、放流前の養殖ウナギと琵琶湖で漁獲したウナギを収集し、性別、年齢、サイズを調査。さらに、ウナギの雌雄が成長段階で決まることに着目し、生殖腺の発達段階も分析した。
主な発見
放流前の1~2歳の養殖ウナギは多くが30センチ未満で性別未確定だったのに対し、漁獲されたウナギは主に4~6歳で40~80センチに成長し、全てメスだった。このことから、小型の養殖ウナギは放流後にメスに分化し、3~4年で漁獲サイズに達することが判明。成長速度は他水域の天然ウナギより良好だった。
成長良好の要因
研究グループの近畿大学農学部の亀甲武志教授(51)は、ダム上流に位置するため競合する天然ウナギが少なく、縄張り争いが起きにくい点を指摘。また、生息密度が低く隠れ場所が豊富で、エサとなるスジエビやテナガエビなどの甲殻類も多く、水温が成長に適した期間が長いことも要因としている。
今後の展望
漁獲した一部の個体には、産卵する銀ウナギに似た特徴も確認された。亀甲教授は「放流後の成長期間が明確になったことで、放流計画が立てやすくなった。銀ウナギ類似個体の生態をさらに調べ、産卵できればウナギ資源の回復に貢献できる」と話している。
研究には滋賀県立大学(彦根市)、同県水産試験場(同)も参加。論文は3月、日本水産学会の国際誌「フィッシャリーズ サイエンス」(電子版)に掲載された。



