断酒3078日、キッチンカーで恩返しを誓う加木直美さんの再生の物語
断酒3078日、キッチンカーで恩返し誓う加木直美さんの再生

断酒3078日、キッチンカーで恩返しを誓う加木直美さんの再生の物語

大阪を拠点に活動する「星の地図」代表の加木直美さん(55歳)は、今日で3078日目の断酒を達成した。この数字は、アルコール依存症との壮絶な闘いを経て、一日一日と積み重ねてきた大切な記録である。キッチンカーで各地を巡り、イカ焼きなどを販売する明るい笑顔の裏には、深い苦悩と再生への決意が秘められている。

若い頃から始まったアルコールとの闘い

加木さんは、両親が大阪市内でスナックを経営していた影響もあり、若い頃から店の手伝いでビールを飲む習慣があった。次第に酒量が増え、20代では一晩で500ミリリットル入りの缶ビール数本とワイン1瓶を飲み干すほどに。高校卒業後、事務機器会社に就職し、27歳で結婚、長女にも恵まれたが、酒量は変わらず、家計からまず酒代を確保する生活が続いた。

「やめなければ」と思う自分と「やめられない」自分との葛藤に苛まれ、くも膜下出血で倒れた母の介護が加わり、悪循環に陥った。ベランダには空のビール缶が山積みになり、「このままの人生でいいのか」と自問する日々が続いた。

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カフェ経営とさらなる依存の深まり

自分を変えたいと、42歳の時に四條畷市の商店街でカフェを開店。日替わりランチと喫茶の店は常連客もでき、一見順調に見えた。しかし、一日中自分の店で自由に飲める環境を手に入れ、お客さんに気づかれないように厨房でエンドレスに飲む毎日が始まった。

3年後には店を手放し、友人の店で働くが、記憶が飛ぶようになり、ついには離れて住む弟に「助けて」と連絡。専門医療機関に1か月半入院し、治療プログラムに沿って断酒したが、退院後も「ここを出たら飲める」との思考から抜け出せず、酔っ払ってケースワーカーに電話する状態が続いた。

娘の事故が決断のきっかけに

「自分で『飲まない』と決めない限り、未来はないよ」という電話口での宣告が耳に残り、肝臓の悪化や体の震えが進んだ。ある日、娘が階段から落ちて肩の骨を折る事故が発生。処方された子供用シロップさえ、震えてカップに注げない自分に気づき、「未来はないよ」という言葉が蘇った。

病院の待合室で初めて娘に「お母さん、お酒やめるわ」と決意を伝えたのは、2017年10月18日のことだった。この日から、断酒の日々が始まった。

再生への歩みと地域貢献

乳製品販売などで朝から晩まで働き、家に居る時間を減らして睡眠をとる生活を始めた。炭酸水で誘惑を紛らわし、目覚める度に「○日目」「飲まずにすんだ」とノートに記録。そのノートは今、9年目に入っている。

約3年前には念願のキッチンカーを購入。月に数回、イベントで熱々のイカ焼きを販売し、ボランティア仲間と大阪市西淀川区の寺で「みんな食堂」を開催。幼い子どもからお年寄りまで約50人が集まり、食事やゲームを楽しんだ。

さらに、食の基本である農業も学び始め、河南町などで農地を借りてサツマイモやタマネギを栽培。春からは岡山・美作地区で米作りにも挑戦する。家族や心優しい人々に支えられ、20歳になった娘もキッチンカーの手伝いをしてくれるようになった。

一日一日の積み重ねが恩返しへ

加木さんは今、一日一日を大切に生きながら、「いつか恩返しにつながるかも」と思いを馳せている。明日の朝も、ノートに「飲まずにすんだ」と書き込めるように、前向きな歩みを続けている。大阪市東淀川区出身の彼女は、会社員やカフェ経営を経て、農業やキッチンカー事業に取り組み、「みんながキラキラ輝けるように」との願いを込めて活動を広げている。

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