茨城県が不法就労外国人通報に報奨金制度を導入 都道府県では初の試み
茨城県は2月18日、不法就労の外国人に関する情報を市民から募り、摘発などにつながった場合に報奨金を支払う「通報報奨金制度」を、2026年度に創設すると正式に発表しました。この制度は、出入国在留管理庁(入管庁)では既に実施されているものの、都道府県レベルでの導入は初めてとなります。
農業分野で全国最多の不法就労者を抱える茨城県の背景
茨城県は農業分野を中心に不法就労が多く、入管難民法違反で退去強制手続きが取られた外国人のうち、県内の不法就労者は2022年から2024年まで3年連続で全国最多となっています。県はこの状況を踏まえ、抜本的な対策として市民から広く情報提供を受け、不法就労を効果的に抑止することを狙いとしています。
県外国人適正雇用推進室によると、具体的な制度設計として、インターネットを利用した情報提供システムを導入し、提供された情報を基に県の担当者が調査を実施します。不法就労が確認された場合には県警に連絡し、報奨金は数万円程度を想定しているとのことです。制度の詳細は今後さらに検討され、新年度の早い時期に開始される予定です。
大井川和彦知事は「人権に配慮」と強調するも
大井川和彦知事は18日の記者会見で、「真面目に働いている外国人労働者を不安がらせるような、身もふたもない話には絶対になりません」と述べ、人権に十分配慮した制度設計を行う方針を明らかにしました。しかし、専門家らはこの制度がもたらす社会的影響について深刻な懸念を示しています。
専門家からは差別助長と社会分断を懸念する声
国士舘大学の鈴木江理子教授(移民政策)は、「市民が疑いの目で身近な外国人を見るようになり、排除の意識が強まらないか心配です。自治体が市民を動員して摘発に協力することは大きな問題です」と指摘します。さらに鈴木教授は、「小遣い稼ぎ感覚で通報する人も出てくるのではないか」と危惧し、制度の運用面での課題を提起しました。
外国人人権法連絡会事務局長の師岡康子弁護士は、入管庁の制度についても問題があると批判します。「外見では誰が在留資格があるか分からず、外国人全体への差別をあおる可能性があります。見た目が外国ルーツの人たちは常に周囲に通報されないかという不安と恐怖を感じることになるでしょう」と述べています。
「秩序ある共生社会」政策の影響と多文化共生の視点
師岡弁護士はさらに、「一般の人々を密告者に仕立て上げ、しかも報奨金付きで、人の心をむしばみ社会を劣化させる施策」と厳しく批判し、制度の撤回を求めています。鈴木教授は、政府が昨年から掲げる「秩序ある共生社会」政策の影響を指摘し、「『秩序のため』が優先され、人権の視点が抜けている。多文化共生の視点を忘れてはならない」と強調しました。
入管庁の既存制度では、非正規滞在の就労者らを通報し、退去強制令書が出た場合に5万円以下の「報償金」を交付しています。同庁によると、この報償金は1951年の出入国管理令(現入管難民法)制定時に導入されましたが、2021年から2025年までの間、実際の交付実績はないとされています。
2004年に入管庁(当時は法務省入国管理局)がネットで情報を募った際には、サーバーがダウンするほどの情報提供があったという過去の事例もあり、今回の茨城県の新制度がどのような反応を呼ぶか注目されます。県は不法就労の可能性が高い情報について調査する方針ですが、専門家の懸念通り、地域社会の分断や外国人コミュニティへの風当たりが強まる可能性も否定できません。



