「障害ある子を持つ母親が働くことは間違いなのか」…18歳の壁に直面するシングルマザーの苦悩
障害児の母親が直面する「18歳の壁」、働き続けられるか (20.03.2026)

「18歳の壁」に立ち向かう母親の孤独な闘い

障害のある子どもが18歳で成人し、学校を卒業すると、支援サービスが途切れてしまう「18歳の壁」。この壁に直面した親たちは、仕事と介護の両立に苦しみ、心身をすり減らしている。特にシングルマザーにとっては、生活のために働き続けなければならない一方で、子どもの世話が優先され、就業が困難になるケースが少なくない。

放課後デイサービスの利用制限がもたらす現実

関東地方に住む51歳の会社員女性は、ダウン症で重度の知的障害を持つ18歳の長男と2人で暮らしている。長男は会話ができず、一人で過ごすことが難しいため、食事や入浴など生活全般でサポートが必要だ。これまで、女性は出社前にヘルパーに迎えに来てもらい、学校終了後は放課後等デイサービス(放デイ)を利用して午後6時頃に帰宅していた。

しかし、長男が特別支援学校を卒業し、4月から成人向けの生活介護事業所に通うことになると、放デイの利用が原則18歳までに制限されるため、利用できなくなる。生活介護事業所の利用時間は午後3時半までで、その後、女性が仕事を終えて迎えに行けるまでの数時間を埋める支援サービスは、定員超過や人手不足を理由に断られることが多い。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

働き続けたい思いと厳しい現実の狭間で

女性の周りでは、同じ境遇の母親たちが「どうせ見つからない」と早々に諦め、仕事を辞めるケースが目立つ。彼女自身も「シングルマザーで仕事を辞めるわけにはいかないのに、仕事を続けられないかもしれない……」と焦りを募らせている。厚生労働省の調査によると、手助けが必要な子どもを持つ母親の就業率は2013年の47%から2019年には68%に上昇しており、社会全体で共働き家庭が増える中、放デイを利用する障害児も増加傾向にある。

それにもかかわらず、学校卒業後の居場所不足は深刻な問題として残っている。東京都品川区では、運営時間を延長する生活介護事業所への補助を開始し、一定の成果を上げているが、こうした取り組みを行う自治体はごく一部に限られている。

支援制度の整備が急務

研究機関「SOMPOインスティチュート・プラス」の上席研究員、宇田香織さんは次のように指摘する。「障害がある子どもを持つ親が離職すれば、親子の生活は窮迫し、労働力不足の中で働き手も減る。障害がある人の家族のニーズを把握し、親が働き続けられる支援制度を、国や自治体、企業が整備していくことが重要だ」

女性は勤務先に事情を説明し、週1日の出社や始業時間の繰り上げなどの条件で働き続けることを認めてもらった。しかし、休日に働く場合、子どもの世話を頼める人がおらず、元夫に協力を求めたが、体調不良を理由にあいまいな返事だった。「障害がある子どもを持つ親は置いてけぼり……」という悔しさと憤りを胸に、眠れない日々を送っている。

彼女は33歳で長男を出産した時、「なんてかわいいんだろう」と胸がいっぱいになり、重度の障害が分かっても「この子のためにお金を残す」と決意した。離婚や胃がんの父親とのダブル介護で疲労困憊しても、長男への思いは変わらず働き続けてきた。今回の壁も乗り越えたいと願っている。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

社会全体での理解と支援を求めて

「障害のある子を持つ母親が普通に働きたいと思うことは間違いなのか」「もう人生のさじを投げてしまおうか」――時折、心が折れそうになるが、すぐに我に返る。彼女のようなケアラーの苦悩は、個人の問題ではなく、社会全体で考えるべき課題だ。国や自治体が積極的に支援制度を拡充し、企業も柔軟な働き方を提供することで、多くの親が仕事と介護を両立できる環境づくりが求められている。