維新の連立入りとその背景
日本維新の会は、自民党総裁選直後の政局で、公明党の連立離脱により窮地に陥った高市早苗氏に手を差し伸べ、社会保険料引き下げや副首都構想を含む12項目の政策を提示した。高市氏側が大半を受け入れたことで、連立政権の樹立にこぎつけた。野党第2党だった維新が、閣外協力という形で政権入りを決断した背景には、党のレゾンデートルである大阪都構想・副首都構想の実現への強い意志がある。
維新の歩みと離合集散の歴史
維新は、2010年4月に大阪府知事だった橋下徹氏が大阪都構想を旗印に創設した地域政党・大阪維新の会を源流とする。創設メンバーの多くは自民党府議出身で、橋下氏の人気を追い風に、2011年の統一地方選で大阪府議会で単独過半数を獲得し、大阪市議会でも第1党に躍り出た。その後、国政進出を目指し、2012年9月に日本維新の会を設立。石原慎太郎氏の太陽の党と合流し、同年の衆院選で54議席を獲得した。しかし、その後は路線対立が表面化し、離合集散を繰り返してきた。2014年には石原氏らのグループと分かれ、江田憲司氏らの結いの党と合流して維新の党を結成したが、長続きせず、2015年に大阪系議員がおおさか維新の会として独立し、2016年に党名を日本維新の会に戻した。
大阪純化路線と全国的支持の苦戦
維新は、大阪では自民党と激しく対立してきたが、歴代政権に対しては是々非々の姿勢で臨み、安倍晋三・菅義偉両元首相とは気脈を通じてきた。しかし、大阪純化路線を強めた結果、広範な支持を広げることは難しくなっている。2024年衆院選では、大阪で全19選挙区を制した一方、それ以外では4選挙区での勝利にとどまり、議席を減らした。2025年参院選でも獲得議席はわずか7で、国民民主党や参政党に比べて見劣りした。政治とカネを巡る不祥事や議員離党が相次ぎ、ジリ貧状態に陥っていた。
自民党との類似性と独自政策
維新は元々、大阪の自民党から分かれた政党とみることができ、憲法観や経済・安全保障政策において根本的な違いはない。むしろ、自公政権時代に公明党がブレーキをかけた安全保障分野では、維新がアクセルを踏むことで防衛装備品の輸出拡大が進みやすくなった。一方、所得制限のない高校授業料の実質無償化は、現役世代の重視を掲げる維新ならではの政策と言える。大阪で導入後、全国への拡大を迫り、2026年4月からの実現にこぎつけた。
大阪都構想と副首都構想の核心
維新が連立を組んでまで実現を目指す最大のテーマは、大阪都構想とその延長線上にある副首都構想である。吉村洋文代表は都構想を「政治家になった原点」と語っており、党の存在理由となっている。
都構想の内容と課題
大阪都構想は、政令指定都市である大阪市を廃止し、その権限・財源を大阪府に移管する構想で、府市の二重行政解消と司令塔の一本化を目指す。実現には、関係議会の承認と大阪市での住民投票での過半数の賛成が必要である。維新は2015年と2020年の2度、住民投票までこぎつけたが、いずれもごく僅差で反対が上回り、頓挫した。橋下氏と松井一郎氏がそれぞれ敗北の責任を取って引退し、党は創設者を失った。
副首都構想とのリンク
維新は、災害時などに首都機能をバックアップする副首都構想に都構想をリンクさせることで、3度目の住民投票を有利に進めようとしている。副首都構想は自民との連立合意の絶対条件として提示され、2026年通常国会での成立を目指す。法案骨子では、特別区設置を要件としており、都構想実現後の大阪を念頭に置いている。しかし、この構想には維新内の非大阪組から「全国政党化に逆行する」との反発が出ており、国民的理解を得られるかは不透明だ。
維新の特異性と今後の展望
維新は、国政政党で唯一東京以外に本部を置き、国会議員と地方議員が同格扱いで、トップダウンでの意思決定が特徴である。これにより、大阪の意向が党全体に強く反映される。
身を切る改革と選挙戦略
維新は、議員定数削減などの身を切る改革で支持を高めてきた。今回、衆院議員定数の1割削減にこだわる背景には、大阪での成功体験がある。しかし、定数削減は維新議員自身の立場を危うくする可能性もあり、根拠が曖昧な点も指摘される。それでも、党内から異論が少ないのは、トップダウン組織の特異性による。
衆院選と消滅リスク
2026年衆院選では、維新は原則として自民党と選挙区調整を行わず、大阪では全勝を狙う一方、自民も大半の選挙区に候補を立てる。高市政権の高い支持率が維新候補にマイナスに作用する可能性もある。維新は経験不足や人材不足を抱え、閣僚ポストを固辞した背景には、自民からの離脱可能性を残す狙いがあった。連立入りが大阪改革の全国拡大や都構想実現のきっかけとなるか、それとも自民にのみこまれて消滅するかは、衆院選が分岐点となる。議席維持・拡大が発言力向上の鍵だが、大幅減なら存在感低下は避けられない。
今、維新は正念場に立たされている。大阪都構想と全国政党化のジレンマを乗り越えられるか、今後の動向が注目される。