埼玉・羽生市消防本部で火災調査書未作成問題 過去20年の1割が放置状態
埼玉県羽生市消防本部において、過去20年間に発生した火災のうち、約1割に当たる案件で「火災調査書」が作成されずに放置されていた実態が明らかになった。調査書は消防法で義務付けられた火災調査の実施を証明する重要な文書であり、この未作成問題は組織的な管理の不備を露呈する深刻な事態となっている。
未作成は48件、死亡事案も含まれる
市消防本部の発表によると、2006年から2025年までの20年間に市内で発生した火災は合計491件に上るが、このうち48件の調査書が未作成だった。未作成の案件には、少なくとも死亡事案が1件、負傷事案が2件が含まれているという。調査書は火災原因の究明や再発防止策の検討に不可欠な資料であり、その欠如は被害者や地域住民の安全確保に重大な影響を及ぼす可能性がある。
消防長の指示も徹底されず、内規の期限を無視
市消防本部の内規では、調査書の作成期限が建物火災は3カ月以内、車両火災は2カ月以内、その他の火災は1カ月以内と定められていた。しかし、同本部では長年にわたり、この期限を守らず未作成案件を放置してきた経緯がある。
2023年4月に着任した山崎武則消防長は、課長補佐級以上の幹部職員に対し、過去にさかのぼって調査書を作成するよう、会議などで数回にわたって口頭で指示を出した。だが、この指示は現場に徹底されず、未作成問題は解消されなかった。幹部職員の間で指示の重要性が共有されなかったことが、問題の長期化を招いた一因とみられる。
組織的な管理不備が背景に
この問題は、単なる事務処理の遅れではなく、消防本部全体の管理体制の脆弱さを浮き彫りにしている。調査書の未作成は、火災予防や安全対策の基礎データが欠落することを意味し、今後の防災計画に支障を来す恐れがある。市民の生命や財産を守るべき消防組織として、その責任の重さが問われる事態だ。
市消防本部は現在、未作成の調査書を速やかに作成するための対策を急いでいるが、根本的な解決には、職員の意識改革と組織風土の見直しが不可欠と指摘されている。この問題は、地方自治体の消防行政におけるガバナンスの在り方に一石を投じる事例となりそうだ。
