被爆者の誕生日に動画配信、核廃絶訴え「Birthday365」で記憶継承へ
被爆体験や核兵器廃絶の訴えを動画で撮影し、その被爆者の誕生日に配信するユニークな活動が注目を集めている。横浜市在住の映像作家、サトウ・セイキさん(45歳)が手掛ける「Birthday365」と銘打った取り組みだ。本業の会社員として働きながら、休日を利用して全国各地の被爆者を訪ね、365日分の動画作成を目標に掲げている。原動力は、「同じ誕生日の人が語る言葉は、より深く関心を持って聞いてもらえるはず」という強い思いにある。
長崎での撮影現場、被爆体験を詳細に記録
2月下旬、長崎市の長崎原爆被災者協議会(被災協)事務所では、サトウさんがスマートフォンを向けながら、被災協副会長の横山照子さん(84歳)に質問を繰り返していた。「8月9日に遭遇したことで覚えていることは何ですか?」「被爆者手帳にはどこで入市被爆したと記載されていますか?」といった問いかけに、横山さんは丁寧に応えた。
横山さんは4歳の時、原爆投下から9日後に祖母と疎開先から長崎市内に戻り、被爆した経験を持つ。建物も人影も消え去った爆心地付近を歩いた際の異様な恐怖感、爆心地から4キロ離れた自宅で被爆した妹が病気に苦しみ、40代で亡くなった悲劇など、詳細な証言を語った。サトウさんは約2時間にわたる撮影素材を、30~40分の本編、10分の短編版、3分のショート版に編集。衛星画像で被爆地点を示したり、発言にテロップを加えたりして、動画を完成させる。横山さんの誕生日である7月27日に、動画投稿サイト「ユーチューブ」の自身のチャンネル「Hiroshima2045」で配信する予定だ。
被爆者からの賛同、若い世代へのメッセージ
横山さんはこの取り組みについて、「被爆者の誕生日に着目した発想は非常に興味深く、被爆者がいた証しを残す活動に感謝している。若い人たちにぜひ見てもらい、核兵器が必要かどうか、自分自身の頭で考えてほしい」と語った。被爆体験の継承が急務となる中、誕生日という身近な要素を通じて、核兵器の悲惨さを伝える新たな手法として期待が寄せられている。
広島訪問がきっかけ、活動への思いを深める
サトウさんがこの活動を始めたきっかけは、2015年に初めて被爆地の広島市を訪れたことにある。広島平和記念資料館で、変形した被爆者の爪や、「折り鶴の少女」として知られる佐々木禎子さんの物語に触れ、心を大きく揺さぶられた。同時に、大学時代に大阪にいたにもかかわらず、広島を訪れず被爆の実相を学ばなかった自分を恥じたという。この経験が、被爆者の声を後世に伝える使命感を芽生えさせ、現在の活動へとつながっている。
「Birthday365」は、単なる記録ではなく、同じ誕生日を共有する人々の共感を呼び起こし、核廃絶への意識を高めることを目指す。サトウさんは今後も、休日を活用して被爆者を訪ね、動画制作を続けていく方針だ。核兵器のない世界を願うメッセージが、365日を通じて発信され続ける。



