島根県出雲市で、外国人の困り事に対応する合同会社「セルソグループ」を設立した日系ブラジル人3世の藤井セルソ栄さん(39)。日本語とポルトガル語の能力を生かし、「日本とブラジルの架け橋になりたい」と語る。
言葉の壁を乗り越えて
藤井さんはブラジル・サンパウロ市生まれ。家族とは日本語、外ではポルトガル語を話す環境で育ち、言語の苦労はなかった。4歳で両親と来日し、東京や大阪で計4年間過ごした。ブラジルに戻り高校生になった時、日本の小学校時代の楽しい思い出から「日本で自分を磨き、成長したい」と決意。両親の反対を押し切り、2005年に再来日した。
岐阜県や静岡県の電子部品工場で働き、08年のリーマン・ショックで派遣切りに遭うも、日本語力を生かして熱海温泉のホテルフロントに就職。10年からは出雲市に移り、工場で勤務しながら、来日間もない日系ブラジル人向けに仕事や生活ルールを教える教育担当も務めた。
中国での経験が契機に
11年に中国人女性と結婚し、中国で長女が誕生。中国語が分からず、「これを貸してください」「水が飲みたい」といった簡単な要求すら伝えられず、深く落ち込んだ。幼少期から日本語が話せたため意識していなかったが、「言葉の壁とはこういうことか。全国の日系ブラジル人も同じ気持ちで暮らしているのでは」と初めて実感。通訳として日本とブラジルの架け橋になる決意を固めた。
市役所での経験を経て起業
22年4月から3年間、出雲市の会計年度任用職員としてポルトガル語の通訳・翻訳を担当。窓口対応や消費者相談、乳幼児健診など多岐にわたる業務をこなす中で、不登校やローン滞納、子どもが親の通訳代わりとなり学習機会を奪われる現状を目の当たりにした。より幅広い困り事に対応したいと25年に起業。通訳・翻訳に加え、就業相談や日本語指導も行い、「日本人と意思疎通できれば可能性が広がる」と日本語学習の重要性を伝えている。
高齢化への対応も視野に
日系ブラジル人の高齢化が進み、家族を失った人への火葬や葬儀手続きの助言、年老いた両親をブラジルから呼び寄せるケースも増えている。「5~10年後にはセカンドキャリアや介護問題が顕在化する」と先を見据え、「高齢化に対応しながら、外国人が安心して暮らせる仕組みづくりを考えたい。気軽に相談してほしい」と話す。



