W杯開幕、熱狂の裏で不協和音 米の強硬姿勢にメキシコ・カナダ複雑
W杯開幕、熱狂の裏で不協和音 米強硬姿勢に複雑な視線

米国とカナダ、メキシコが共催するサッカー・ワールドカップ(W杯)北中米大会が11日(日本時間12日)、メキシコ市で開幕した。W杯史上初めてとなる3カ国での開催は、米国で2期目のトランプ政権が「自国第一」の政策を推し進めている時期と重なった。開催地では熱気が高まる一方、米国から露骨な圧力を受けるメキシコやカナダでは、W杯に複雑な思いを抱く人々も少なくない。

メキシコ市は祭典ムードも、米国との緊張続く

「とても楽しみ。始まったら街はW杯一色だ」――メキシコ市では開幕の1週間以上前から祭典ムードが漂っている。W杯開催に向けた飾り付けが目立つ市中心部で、タクシー運転手の男性が期待を語った。メキシコにとって1970年と86年に続く3回目の開催は世界最多だ。

しかし、高揚感の一方で、共催する米国とは緊張した関係が続く。政権に昨年返り咲いたトランプ大統領が、移民政策や麻薬対策で強硬姿勢を取り続けているためだ。トランプ氏は「史上最大の強制送還」を掲げ、移民取り締まりを強化。米国の収容所では、劣悪な環境などから昨年だけでメキシコ人を含む30人以上が死亡した。今年はそのペースを上回り、メキシコのシェインバウム大統領は「こんな事態があってはならない」と強い懸念を表明している。

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トランプ氏は麻薬組織の拠点を軍事攻撃する可能性も示唆。さらにメキシコの複数の政治家を麻薬関連の罪で起訴しており、メキシコ側は内政干渉だとして抗議している。経済面でも、第1次政権時に自ら「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に署名したにもかかわらず、隣国を関税で脅かしてきた。そのUSMCAの見直し協議もこのタイミングで本格化している。

強制送還された移民「人生台無し」

メキシコ市中心部の一角に「リトル・ロサンゼルス」と呼ばれる地区がある。米国人向けに電話サービスを提供するコールセンターがあり、英語力を生かせる職を求めて、米国から強制送還された人々が集まることからこの名がついた。

「両国間の問題が深刻で、W杯のイメージを曇らせている」。この地区で働くイバン・ポラスさん(33)は複雑な胸中を明かす。トランプ政権下で米国から強制送還された移民の一人だ。9歳の時に両親に連れられて米国に渡り、30年以上暮らしてきたが、昨年突然拘束され、メキシコに送還された。家族は米国に残ったままで、「W杯を楽しむ気持ちになれない。人生が台無しだ」と語る。

メキシコでは「W杯をボイコット」とする教員らの大規模デモも発生。鉄パイプで車を破壊するなど過激化する場面も見られた。また、チケットや鉄道運賃の高騰も問題視されている。

米国とメキシコの間では、移民問題だけでなく、麻薬密輸や関税をめぐる対立が続く。トランプ政権の強硬姿勢は、W杯というスポーツの祭典に政治的な影を落としている。

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