米国が中東地域でのイランとの紛争に注力する中、インド太平洋地域では米国の存在感が低下し、いわゆる「力の空白」が懸念されている。そうした国際情勢を背景に、シンガポールで開催された「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」では、米国の主要な同盟国であり、高市政権のもとで防衛力の抜本的強化を進める日本の役割が大きく注目された。東南アジア諸国の視線には、日本への期待と不安が交錯している。
会議のハイライト:小泉防衛相の演説
インド太平洋地域の国防相らが参加する同会議の今年のハイライトは、ヘグセス米国防長官とともに、小泉進次郎防衛相の演説だった。小泉氏は、中国の「新型軍国主義」批判に反論し、日本は武器輸出拡大や防衛力強化を通じて地域の平和と安定に貢献する姿勢を明確に打ち出した。会場からは「日本がアジアを支援するというメッセージだった」(韓国の研究者)として、おおむね好意的な評価が聞かれた。
東南アジア諸国が期待する日本の役割
東南アジア諸国が期待する日本の役割について、シンガポールのビラハリ・カウシカン元外務次官は「インド太平洋地域において、米国の軍事プレゼンスを支える『いかり(アンカー)』役だ」と指摘する。米中が同地域で覇権争いを繰り広げる中、日本が安定したパートナーとして機能することが期待されている。
一方で、日本の防衛力強化が地域の軍拡競争を招くのではないかとの懸念も一部にある。特に、日本の武器輸出拡大は、東南アジア諸国にとって技術協力の機会となる一方、紛争の激化を招くリスクもはらんでいる。
日本の防衛政策の転換点
高市政権は、防衛費の大幅増額や反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有など、戦後日本の安全保障政策の大きな転換を進めている。これに対し、中国は強い反発を示しており、日中関係の緊張が続いている。東南アジア諸国は、日中両国との経済的な結びつきが強く、両国の対立が地域の安定を損なうことを懸念している。
今回の会議では、日本の防衛力強化が地域全体の安全保障にどのように寄与するかが議論の中心となった。小泉防衛相は、日本が「ルールに基づく国際秩序」の維持に貢献する姿勢を強調し、各国の理解を求めた。
今後の展望
米国の存在感低下が続く中、日本が地域の安全保障において果たす役割はますます重要になるとみられる。しかし、東南アジア諸国は、日本の軍事大国化に対する警戒感も抱いており、日本は透明性のある政策運営と、地域との対話を継続する必要がある。
シンガポールの研究者は「日本は米国と中国の間でバランスを取る役割を期待されている」と述べ、日本の慎重な外交姿勢が求められると指摘した。



