辛うじて保たれていた米国とイランの停戦合意が崩れかねない危機的な事態に直面している。両国の衝突が再び大規模な戦闘に発展すれば、国際社会が受ける打撃は計り知れないものとなるだろう。双方は自制し、外交を通じて事態を収拾しなければならない。
米軍の攻撃とイランの報復
米軍は、イラン南部にある防空システムの拠点など軍事施設約20か所をミサイルなどで攻撃した。この翌日には、南部の港湾都市などを標的とした攻撃も行っている。これに対し、イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」は、米軍への対抗措置として、バーレーンにある米海軍第5艦隊の司令部などにドローン(無人機)による攻撃を仕掛けた。
一連の戦闘の発端は、イランがホルムズ海峡で米軍ヘリを撃墜したことにある。パイロット2人は救助されたが、米軍は「イランの不当かつ継続的侵略への対応」だとして、攻撃を正当化している。
停戦後の初めての攻撃応酬
米国とイスラエルが、核開発を続けるイランへの攻撃に踏み切ってから3か月以上が経過した。4月上旬に米国とイランが停戦に合意して以降、本格的な攻撃の応酬は今回が初めてだ。暴力の連鎖はイランを巡る問題の解決にはつながらない。
ホルムズ海峡封鎖の脅威
米軍の攻撃を受け、イランは改めてホルムズ海峡を封鎖すると発表した。自由な通航が認められていたホルムズ海峡を封鎖することが国際法に反しているのは明らかであり、海上交通の要衝を人質に取るかのような手法は許し難い。
戦闘終結協議の行き詰まり
米国とイランの戦闘終結に向けた協議は行き詰まっている。米国はこれまでの交渉でイランに対し、まずホルムズ海峡の自由な通航を認めるよう求めている。最大の懸案である核問題については、戦闘終結後に両国で協議するという立場だ。一方、イランはホルムズ海峡を自ら管理すると譲らず、米国が核兵器に転用可能な高濃縮ウランの引き渡し要求を修正する必要があると主張している。
トランプ米大統領は停戦後、戦闘終結の合意は近いなどと何度も楽観的な見方を示してきたが、双方の立場の隔たりは埋まっていないようだ。トランプ氏の発信もまた、混乱に拍車をかけている。
イスラエルのレバノン攻撃の影響
イスラエルがレバノンへの攻撃を激化させていることも、戦闘終結を脅かす波乱要因だ。イスラエルは、親イラン勢力ヒズボラが拠点とするレバノン南部や、首都ベイルートまで攻撃している。レバノンの戦乱を鎮めることも米国とイランの合意を達成するのに不可欠な要素である。



