競合企業が手を組み、九州に新たな電源を建設
九州電力と西部ガスは3月24日、共同で北九州市に建設した液化天然ガス火力発電所を報道陣に公開しました。この発電所は「ひびき発電所」と名付けられ、出力は62万キロワットと原子力発電所1基の半分程度の規模を誇ります。営業運転は3月31日にも開始される予定です。
約30年ぶりの新設、初の共同事業
九州電力が主導したこのプロジェクトは、九州内における火力発電所の新設としては約30年ぶりの事例となります。一方、西部ガスにとっては初めての発電事業参画となり、両社にとって記念すべき共同事業となりました。
興味深いのは、電力小売り市場では競合関係にある両社が、発電事業においてはリスクを分け合う目的で手を結んだ点です。元々は西部ガスが建設の検討を始め、将来の電力需要を見込んだ九州電力が参画して主導権を握る形で進められました。
再生可能エネルギーの増減を補完する重要な役割
LNG火力発電所の最大の特徴は、出力を増減しやすい点にあります。この特性は、太陽光や風力による発電が天候に左右され、急激に増減する再生可能エネルギーを補完する電源として極めて重要です。
九州電力の担当者は「世界的にみても発電効率が高い火力発電所だ」と胸を張ります。最新鋭の設備を導入したことで、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量が従来型より少なく、将来的には水素を燃料とすることも可能な設計となっています。
最新設備と供給能力
公開されたひびき発電所の主要設備には、高さ80メートルの煙突がそびえ立ちます。中央制御室やタービン建屋には最新技術が導入され、高い発電効率を実現しています。
総事業費は非公表ですが、出力は九州電力の全LNG火力発電設備の15%に相当し、約110万世帯の年間消費電力を供給できる能力を持っています。燃料となるLNGは、隣接地にある西部ガスの「ひびきLNG基地」などから供給される予定です。
九州の電力需要増加を見据えた戦略
九州電力がこの発電所の建設を決断したのは2021年でした。その後、九州では半導体工場の新設や、AI普及に伴うデータセンターの建設計画が相次ぎ、電力需要の増加が予想されています。
九州電力は昨年、九州の2034年度の電力需要が2025年度比で20~30%程度増加する可能性があると試算しており、安定した電力供給の重要性がますます高まっています。両社は発電した電力を自社で販売したり、他社に売電したりする計画です。
この共同事業は、競合企業が地域のエネルギー安定供給という共通目標のために協力する新しいビジネスモデルの可能性を示しています。再生可能エネルギーの拡大と安定した電力供給の両立を目指す中で、LNG火力発電所の役割は今後さらに重要になるでしょう。



