令和版ギャバン始動!特撮レジェンドが語る新ヒーロー構想と戦隊シリーズ終焉の背景
令和版ギャバン始動!特撮レジェンドが語る新ヒーロー構想

スーパー戦隊シリーズ50年の歴史に幕、新ヒーロー「ギャバン」が令和に躍動

「秘密戦隊ゴレンジャー」から始まり、「太陽戦隊サンバルカン」「侍戦隊シンケンジャー」など、恐竜や車、忍者、警察とテーマを変えながら半世紀にわたり子どもたちのヒーローであり続けた「スーパー戦隊シリーズ」が、今月ついに放送を終了した。その代わりとして2月15日にスタートした新番組が「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」である。なぜ今、チーム戦隊ではなく、昭和末期に活躍した単独ヒーロー、ギャバンが復活したのか。平成仮面ライダーシリーズなど特撮界のレジェンド、東映の白倉伸一郎・上席執行役員(60)がその背景と狙いを明かした。

「全部、ライダーのせい」 戦隊と仮面ライダーの決定的な差

白倉氏は「はっきり言えば、仮面ライダーのせいですね」と核心を突く発言で語り始めた。長年、「スーパーヒーロータイム」枠で日曜朝に連続放送されてきた「ライダー」と「戦隊」だが、近年では話題性や動画配信サービスでの視聴数、グッズ売り上げなど経済面で好調が続くライダーとの差が拡大していたという。

特に大きな違いは、仮面ライダーの場合、過去の作品にも熱烈な支持が寄せられる点だ。放送中の作品はもちろん、かつて楽しんだ大人たちが過去作を視聴し、スピンオフ作品があれば見たり、新グッズを購入したりと強力な後押しがある。一方、戦隊シリーズではこうした動きは微々たるもの。「戦隊ファンは卒業しちゃうけど、ライダーファンは卒業しない」という差が無視できないレベルに達していた。

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マンネリ打破できず 戦隊シリーズ終焉の理由

戦隊シリーズも毎年てこ入れを試みてきた。色違いのスーツをまとった5人程度の戦士が地球を狙う悪の組織と戦う基本線は変えず、様々なアイデアをひねり出してきた。2018年放送の「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」では一作品に二つの戦隊を登場させ、2021年開始の「機界戦隊ゼンカイジャー」ではメンバーのほとんどをロボットにした。

しかし、それらもマンネリズムを完全に打破するには至らなかった。「しがらみを取っ払って、全く新しいヒーロー像を作るために、新たな枠組が必要だった」と白倉氏は語る。今月放送が終了した第49作「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」を最後に、50年の歴史にピリオドが打たれた背景には、こうした構造的な課題があった。

なぜ「ギャバン」か? 昭和の名作を令和に蘇らせる戦略

全く新しい企画ではなく、1980年代に放送された「宇宙刑事ギャバン」の名を冠した作品にした理由について、白倉氏は「新作を突然やっても、視聴者は置いてけぼりになる。それはもったいない」と指摘する。昔のファンを新しいファンにしていく意味で、かつて誰もが知っていたヒーロー「ギャバン」は格好の題材に映った。

元祖「ギャバン」は1982年、メタリックな「コンバットスーツ」を身にまとう全く新しい特撮ヒーローとして登場。米映画「スター・ウォーズ」のライトセーバー風「レーザーブレード」を武器に、「魔空空間」と呼ばれる異次元空間で戦う斬新な発想で当時の子どもたちを熱狂させた。続編「宇宙刑事シャリバン」「宇宙刑事シャイダー」などに受け継がれ、メタルヒーローシリーズは1999年まで続いた。

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白倉氏は「なんでああなっちゃったのかわからない作品なんです」と笑いながら語る。「宇宙刑事と銘打つのに、舞台は基本的に地球。宇宙人がわざわざ訪れる。しかもギャバンは魔空空間で戦う。それだと地球刑事、異次元刑事だろ、と。不思議なぐらい宇宙刑事じゃない」。だが、当時の制作者たちの自由な発想が、新シリーズを始める上で心強く思えたという。「戦隊シリーズが長く続き、作り手も理屈っぽくなった。ギャバンの非凡な発想や、はっちゃけたDNAを受け継げたらいい」。

「仮面ライダーに『おのれ、ギャバン』と言わせたい」

あえて既存の看板を掲げることで、いい意味で予想を裏切ろうという意図もある。「ギャバンを出したことで、一種の“侮り”も出てくると思うんです。次はどうせ『シャリバン』だろう、とかね。そうでなかったときの驚きは際立つでしょ」と白倉氏は語る。

今をときめく仮面ライダーも、「仮面ライダーBLACK RX」の放送が終わった1989年からテレビシリーズは長い空白があった。その後、メタルヒーローシリーズが終わった翌年の2000年、リアル志向や難解なストーリーなど昭和の仮面ライダーとは一線を画した「仮面ライダークウガ」が新たに始まり、平成ライダーシリーズの人気は令和の今も続いている。その立役者の一人だった白倉氏は「令和版『ギャバン』は『クウガ』以上に激しくジャンプアップしてくれるはず。今度は仮面ライダーに『おのれ、ギャバン』と言わせたい」と意気込む。

新シリーズ「PROJECT R.E.D」の展望

今回の「ギャバン」は、東映が手がける新たな特撮シリーズ「PROJECT R.E.D」の第1弾という位置づけだ。第2弾以降は未定だが、スーパー戦隊シリーズが毎年世界観を変えてきたのに対し、今後は同じ主人公で2年目に突入するなど、番組の立て付け自体を変えることも視野に入れている。

白倉氏は「せっかくファンになってくれた子たちも、全く別のメンバーや世界観の番組が始まれば、卒業していってしまうのは当たり前ですよね」と指摘。「少子化の今、これまでのサイクルが時代に合わなくなってきた」と現状を分析する。

「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」の新たな挑戦

新番組では、様々な宇宙人たちが共生する時代になった地球が舞台。銀河連邦警察の捜査官・弩城怜慈(ドキレイジ)が地球で起こる異常な出来事を捜査し、強大な敵が現れると「ギャバン・インフィニティ」に変身して戦う。今回は別の次元の地球にも移動でき、その地球にも別の「ギャバン」が存在するという発想が新しい。

いくつもの宇宙をまたぐ世界観を、久慈麗人チーフプロデューサー(37)は「ドラえもんの映画に例える」と説明。「のび太たちが、別世界で友達と仲良くなって、また家に帰る、みたいな映画での交流をテレビで毎話するのは面白いんじゃないか」。主人公のギャバンも、別のギャバンや各地で出会う人々と“合同捜査”に当たる。

一方で、金属質な外見に加え、「1ミリ秒」という短時間で変身する際のかけ声「蒸着!」や、引きずり込まれると敵が強くなる「魔空空間」といった昭和版の設定はきっちり生かした。変身直後、「では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう!」とナレーターが語り、スローで再び変身シーンを流すお約束もそのままだ。

現場を知るスタッフ陣が支える特撮の魅力

実は久慈チーフプロデューサーは入社前、スーツアクターとしてヒーローショーに出演していた異色の経歴の持ち主。「足を開く幅、背筋の伸ばし具合にもスーツアクターはこだわる。CGではなく実物が動いているぶん、子供たちが勇気をもらえる度合いが全然違う」と力説する。

さらに、今作の監督・福沢博文は「シンケンジャー」などでスーツアクターとして活躍していた。“現場”を熟知したスタッフ陣が、特撮ヒーローならではの魅力を高めている。

「鬼滅の刃」「チェンソーマン」など日本発のアニメ映画が世界的に人気を博し、米国発のCGを駆使したヒーロー映画も好評だ。だが、特撮番組が生み出す生の造形物の迫力は、それらに引けを取らないと制作陣は考えている。スーパー戦隊のリーダーの色・レッドを引き継ぎ、赤く輝くコンバットスーツのギャバン・インフィニティ。子どもたちの心に再び火を付けることができるか、注目が集まる。