NHK「視聴者と語る会」でネトフリ配信の本音がぽろり 商売っ気含め「殻を破る議論を」
NHK「視聴者と語る会」で本音 商売っ気含め殻破る議論を

NHKが動画配信大手ネットフリックスへの番組配信再開を発表した。これに対し、「受信料で制作した番組で金儲けをするのか」との声が上がる中、秋田放送局で開催された「視聴者のみなさまと語る会」で、今回の発表にまつわる本音とも言える見解が飛び出した。受信料支払率が全国トップというNHKへの信頼度が極めて高い県民が引き出した発言は、公共メディアの近未来像を考える上で参考になりそうだ。

秋田で開催された「視聴者と語る会」

語る会は、NHKの最高意思決定機関である経営委員会が視聴者の意向を直接聞くため、改正放送法に基づき2008年度から導入された。年6回以上、全国の放送局で開かれ、委員や執行部が出席する。23日の語る会には、他の県に比べて多い42人の視聴者が参加。経営委からは田渕正朗元住友商事代表取締役専務執行役員ら、執行部からは山名啓雄副会長らが出席した。

語る会ではこれまで番組に関する質問や意見が多く寄せられてきた。今回も「番組の進行役はお笑いタレントではなくアナウンサーが務めるべき」といった意見があった。しかし、秋田は受信料の都道府県別推計世帯支払率が長年全国トップで、2024年度末は全国平均77.3%に対し96.1%だった。そのため、番組や受信料制度への思いが他県以上に強く、「受信料の公平負担と言いながら、なぜ沖縄は安く、支払率も最低なのか」といった質問が出た。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

沖縄の受信料は、1972年の本土復帰に伴う特別措置法で「当分の間、沖縄県の区域における日本放送協会の業務の実状及び社会的経済的事情を考慮して定められなければならない」と規定され、地上契約は月額965円と他地域の1100円より安い。支払率はワースト1で、2024年度末は46.6%だった。これに対し、質問者は「『当分の間』と言っても50年以上過ぎている。他地域と同額にしてほしい」と詰め寄った。

受信料制度への様々な意見

物価高やテレビ離れでNHKの財務状況が危機的となる中、現在の受信料制度のあり方に関する意見も相次いだ。ある男性は「防災・災害情報は社会インフラ。受信料ではなく、国民への均等割りで広く徴収し、番組や配信には別途利用料を取れば公平性が保たれる」と提案。別の男性は「受信料収入が減る中で今の規模維持は無理。NHKの役割を報道と防災に絞り、地方局やチャンネル数を整理して財政規模を3分の1に縮小し、受信料制度を廃止。国民1人あたり月額100円程度を税金で拠出すれば反対も少ない」と具体的な提案を行った。

こうした意見はこれまでの語る会ではほとんど聞かれなかった。受信料を負担する一人一人が、NHKを取り巻く厳しい状況を我が事として考え始めていると言える。

執行部と経営委の対応

山名副会長は「受信料は対価主義とは違い、NHKを支えるための共通負担」と述べ、「未来永劫に変えないわけではなく、NHKだけで決められるものでもないが、常に検討している」と柔軟な姿勢を示した。これは、井上樹彦会長が3月のインタビューで「受信料制度は最上」と語った発言よりも柔軟だ。

田渕委員も、2027~29年度経営計画策定に向けて「どういうあり方がいいのか、どうやって収入を確保できるか、相当詰めて議論する。経営委と執行部の最大の論点がそこにある」と決意を示した。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

番組の再利用を巡る議論

番組の再利用について視聴者の意見が分かれた。ある男性は「受信料が下がったおかげで再放送が多い。元の受信料に戻してちゃんとした番組を作ってほしい」と要望。これは23年秋の受信料1割値下げにより、27年度までの4年間で1000億円の支出削減を余儀なくされていることを踏まえた発言だ。一方、再放送支持派からは「録画を忘れることもあるので大歓迎」との声が相次ぎ、番組への接触機会が増えたことで友人同士で盛り上がったとのコメントもあった。

また、別の男性は「大河ドラマや朝ドラなど価値の高い番組が多いので再放送には需要がある」と指摘。さらに海外展開に話を広げ、「公共放送だから商売っ気を出すのはどうかと思うが、積極的に行えば受信料収入の補填になるのでは」と提案した。

これに対し山名副会長は「受信料で作った番組をアーカイブスにしており、価値が上がっている。これをどう届けるかが重要なテーマ」と述べ、ネトフリへの番組配信を6月から再開することを説明した。

ネトフリ配信再開の背景

NHKは以前もネトフリに番組を提供していたが、同社が2022年にCM付き低価格プランを導入したため、NHKがCMを流していると誤解される恐れがあるとして、23年10月以降提供を停止していた。今年6月22日から再開され、大河ドラマ「軍師官兵衛」や連続テレビ小説「まんぷく」など6作品から配信を始め、今年度は計19作品を提供する予定だ。再開後、NHKの番組配信時にはCMは表示されない。

井上会長は20日の定例記者会見で、「NHKの良質なコンテンツが海外でどこまで受け入れられるかを実証できる絶好の機会」と指摘。「まず日本のコンテンツの魅力を知ってもらうことが第一。副次的収入は生まれるが、経営の足しや糧にしようというわけではない」と明かした。しかし、国民の受信料で制作した番組をどこまで販売できるか疑問視する視聴者もおり、反発も起きている。

経営委員の「商売っ気」発言

語る会で山名副会長は「お金儲けではなく、海外の人に日本の映像文化を楽しんでもらう可能性を探りたい」と述べた。これに対し、田渕委員が絶妙な注釈を入れた。「NHKは圧倒的なコンテンツを持っている。このデータの価値は他にない。それをいかにお金に変えるかは本来重要。私は商社にいたので、これだけの貴重なデータがあれば相当マネタイズできるとワクワクする。しかし、受信料で作ったもので金儲けをするのはどうかという問題もある。副会長は『ネトフリ配信は金儲けのためじゃない』と言うが、お金はもらう。結果としてしっかりお金を頂く。だからIPの展開をどうやって受信料負担の軽減や収入減少のカバーにつなげるか、あるいはもっと商売っ気を出してもいいのではないかという領域も含め、今後、殻を破るような議論が執行部と経営委の間でできるといい」

井上会長はネトフリ配信再開を「大きな転換点となる取り組み」と認識。その心は田渕委員の認識に表れているようだ。果たしてNHKが商売っ気を含めた「殻」を破れるか、破るべきか、破ってはならないか。次期経営計画策定に向けた内部の議論とともに、今後の語る会や、受信料を負担する視聴者自身が考えてみてもいい。