水野修孝の巨大交響曲「交響的変容」全曲が、約34年ぶりに再演された。演奏時間は約3時間半に及び、初演時には700人もの出演者を擁したという国内最大級の作品である。今回の公演は、指揮者の山田和樹がこの春に東京芸術劇場の音楽部門芸術監督に就任したことを記念するとともに、同劇場の新企画「交響都市計画」の発足を兼ねた一大イベントとして実施された。会場は満員御礼となり、次にいつ聴けるか分からない貴重な機会とあって、熱気に包まれた。
巨大編成が生む圧倒的な音響
今回の公演では、会場に合わせて編成を縮小したものの、それでもなお大所帯であった。管弦楽を担当した読売日本交響楽団は、拡張された舞台のへりまでびっしりと配置され、特に金管楽器や打楽器の数は目を疑うほどの大人数であった。管楽器と打楽器の響きが弦楽器の音を覆い隠す傾向はあったものの、通常のクラシック音楽ではまず体験できない音圧が、原始的な高揚感を聴衆にもたらした。
山田和樹の颯爽とした指揮
巨大編成にもかかわらず、山田和樹の指揮は颯爽として軽やかであった。管弦楽も重量感がありながら反応が鋭敏で、もったりとした印象を与えない点が素晴らしい。さらに、ソリストや合唱陣も充実しており、作品の魅力を引き立てた。
第3部と第4部の見どころ
第3部では、和太鼓奏者の林英哲とティンパニ奏者の武藤厚志が、限界に挑むような熱量で競演。第4部では、東京混声合唱団をはじめとする5団体が、複数の群に分かれて大合唱を展開。原爆の恐怖を語り、民謡や聖歌、法華経、さらにはシラーやゲーテの引用までを渾然一体となって歌い上げた。ソプラノ独唱の熊木夕茉も清冽な歌声を響かせた。
空虚さも残るが、作曲者の喜び
しかし、これほど献身的な演奏をもってしても、埋められない空虚さが残るのも事実である。楽器の数に比べて曲が要求する発想のバリエーションは少なく、複雑な部分や楽想を並列した箇所では構造や軸が見えにくくなる。また、カオスが続くと、やがて大音量の効果自体が薄れてしまう傾向があった。
とはいえ、現在92歳の作曲者・水野修孝が再び自作品の実演を聴くことができたのは喜ばしい限りである。本作は完成までに足かけ25年を要した。誇大妄想的なきらいはあるものの、世界中の文化芸術と信仰を尊重し、戦争を憎む水野の心に偽りはないだろう。
(音楽評論家・松平あかね)
――10日、池袋、東京芸術劇場。



