女子というのは、ある時期が来ると薄衣を一枚ずつはいでいくように美しくなる。
幼い頃は、貝や蟹を獲るため、磯を飛び回り、日焼けした真っ黒な顔をしていた。
それが今は、白磁のように滑らかで、輝くような白い肌をしている。
十五であれば、もう縁談が持ち上がってもおかしくない。そういえば、清乃が剣術道場に暮れの挨拶に訪れた際、道場の奴らが稽古そっちのけで窓に張り付いていた。
中でも一番厄介なのが、澤野喜一郎だ。父親は足軽や徒士などを監視する徒士目付を務めている。いずれは、その跡を継ぐのだろうが、自分に楯突くとうちの親父が出るぞ的な、態度を時々出すのが難点だ。おれが江戸に行っている隙をつき、清乃に縁談を持ち込んできたとしたら――あちらのほうが家柄も上なので、拒めない。
だが、あんな男には絶対、清乃は渡さない。
といっても、喜一郎とは幼馴染みでもあるので、少々厄介だ。
「どうしました? 倫太郎。顔が強張っておりますよ」
時枝にいわれて我に返った。
「あ、いや。旅は初めてですから、少々気が張っておりまして」
さすがに、喜一郎に気を付けろともいえず、そう答えると、時枝が眼を丸くした。
「おやおや、そのように意気地のないことを。江戸の入り口までは十一里ほどですよ。殿方の足であれば、一日で着いてしまいます」
「まあ、そうですけど」
倫太郎は盆の窪に手を当てる。
「さ、しゃんとなさいませ」
時枝の厳しい声に、倫太郎の背筋が伸びた。
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