第30回手塚治虫文化賞贈呈式、カッパ姿で登場の受賞者も
2026年6月11日、東京都内で第30回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式が行われた。マンガ大賞の児島青さん(「本なら売るほど」)をはじめ、新生賞のサイトウマドさん(「怪獣を解剖する」)、短編賞のかわじろうさん(「あたらしいともだち かわじろう短編集」)、特別賞の武田一義さん(「ペリリュー ―楽園のゲルニカ―」)が登壇。かわじろうさんはカッパのかぶり物で登場し、観客の笑いを誘った。各受賞者のスピーチ概要は以下の通り。
マンガ大賞 児島青さん
児島さんは、幼少期から一人で絵を描いたり本を読んだりすることが好きで、自分だけの箱庭の中で遊んでいたと振り返る。コロナ禍で生活が揺らぐ中、担当編集者に声をかけられ、マンガで食べていく道を選んだ。編集者が開いたドアから読者が訪れ、今回の受賞につながったという。手塚治虫の名は、マンガ家にとって共通の祖先のような存在だと語り、「自分でいいのかという思いは拭いきれないが、ただ描くしかないという諦観もある」と述べた。賞金は本屋で本を買って還元したいとし、「本屋は本を買うだけでなく、出会いや冒険、避難所でもある。当てもなく本屋に行けるのが一番幸せ」と語った。
新生賞 サイトウマドさん
サイトウさんは、昨年発売した作品集に榎本俊二先生が帯コメントを寄せ、その直後に榎本先生が手塚治虫文化賞短編賞を受賞したことに触れ、「まさか1年後に自分が新生賞をいただけるとは夢にも思っていなかった」と喜びを語った。榎本先生が瀬戸大橋を見て「人間ってすごい」と言った言葉を思い出し、過疎が進む与島での盆踊りを見に行った体験を紹介。巨大な瀬戸大橋と、その足元で続く日常の営みの対比が、自身の作品「怪獣を解剖する」のテーマと重なったと述べた。「作品を読んだ方が、ふとした瞬間にこのマンガを思い出し、いろんなことに思いを巡らせてもらえたらうれしい」と語り、明日から新連載を始めることも明かした。
短編賞 かわじろうさん
かわじろうさんはカッパの覆面で登場し、「このようなふざけた格好で申し訳ない。だいたい同じだと思って見ていただければ」と笑わせた。手塚治虫のマンガに囲まれて育ち、マンガ家を志したが、大人になるにつれて何を描いていいかわからなくなったという。その後、マンガ教室に通い、短編を描き続けるうちに、「すごいものを描くのではなく、自分が表現したいことが伝わること自体が面白い」と気づいた。今回の短編集は「小さな心の動きや個人的な記憶」を描いたもので、マンガの表現の奥行きに魅了されたと語った。手塚治虫の業績に敬意を表しつつ、「先人たちが作った表現に、自分も新しい何かを加えていきたい」と意気込みを述べた。
特別賞 武田一義さん
武田さんは、ペリリュー島を描き始めたのは11年前の戦後70周年の年で、天皇皇后両陛下が同島を訪問されたことをきっかけに知ったと説明。戦史研究家や生還者の話を聞き、マンガを描く決意をした。手塚治虫をはじめ、子供の頃から接したマンガ家たちが戦争を描いていたからこそ、自然と自分も描こうと思えたと振り返る。作品は「戦争を知らない世代の戦争マンガ」と紹介されることが多く、自身も体験していない戦場を描いているが、今後も戦争を知らない世代が描きついでいくものだと語った。三頭身の絵で描いた理由は「小さな子供にも読んでもらいたいから」で、実際に小学生からの反応も得ている。戦史研究家や体験者、研究者への感謝の言葉で締めくくった。



