なかなか思い出せない記憶は、数十秒待てば出てくる可能性がある――。脳内の「ヒスタミン神経」が数十秒間隔で揺らぐことが、記憶を呼び起こすメカニズムに影響していることが、名古屋市立大学などの研究グループによって明らかになった。この研究成果は、12日付の米科学誌『ニューロン』に掲載された。
ヒスタミン神経の新たな役割
ヒスタミン神経は、睡眠と覚醒を調節する役割で知られているが、今回の研究で、記憶に関わる情報伝達にも深く関与していることが示された。これまで、睡眠時には活動が低下することが分かっていたが、覚醒時の詳細な活動は不明だった。
マウス実験で確認
研究グループは、音を聞くと報酬の砂糖水が得られると学習したマウスを用いて実験を行った。その結果、ヒスタミン神経の活動が活発なタイミングで音を聞かせると、活動が低い時と比べて、学習した記憶に基づく行動の頻度が約40%高まることが判明した。
また、ヒスタミン神経は感情の記憶に関わる脳の組織を整え、記憶に基づく行動パターンをより忠実に再現することも確認された。これにより、記憶が引き出されやすくなっていると考えられるという。
数十秒待つと可能性
研究グループによると、ヒスタミン神経は覚醒中に、およそ10~30秒間隔のゆったりとした活動の変動を繰り返す。この揺らぎが記憶の喚起につながるため、しばらく諦めずに待つことで、思い出せる可能性があるとしている。
名古屋市立大学大学院医学研究科脳神経科学研究所の野村洋・寄付講座教授は、「知っているはずの人の名前が出てこないなどの状態は、記憶そのものが失われたのではなく、その時々の脳内の状態によって記憶にアクセスしやすい時としにくい時があるからだ。この発見は、認知症や加齢による一時的な物忘れなどが起きる仕組みの解明にも役立つ可能性がある」と説明している。



