ボランティアから移住者へ、農業で地域復興に貢献
熊本地震で被災した熊本県西原村に、災害ボランティア活動をきっかけとして移住した男性がいる。静岡県出身の小出真也さん(50)は、現在農業に挑戦しながら、サツマイモのブランド化など村のPR活動にも積極的に取り組んでいる。近くでは観光客らへの野菜直売も開始する予定で、小出さんは「元気になった村を多くの人に知ってほしい」と意気込んでいる。地震発生から今月で10年を迎える被災地は、こうした新たな力も借りながら着実に前進を続けている。
静岡から熊本へ、ボランティアが人生を変えた
静岡県沼津市出身の小出さんは、地震が発生する前まで同県内の食品輸入販売会社に勤務していた。各地で災害ボランティアに取り組む高校の先輩たちの姿に影響を受け、自身も活動に参加するようになった。東日本大震災の際には有給休暇を取得して被災地に入り、支援活動に従事している。
2016年4月、テレビでは連日のように熊本地震の被害状況が報じられていた。家屋が軒並み倒壊した町、石垣が大きく崩れた熊本城、そして余震を恐れる被災者たちの姿を見て、小出さんは「何かできることはないか」と考えた。2か月後には実際に益城町や大津町を訪れ、がれき撤去などのボランティア活動に参加した。その活動の中で、西原村が被災農家の支援を求めていることを知り、屋内作業もあり天候を問わず手伝えると考えて参加を決意したのである。
農業への転身と村への定着
ボランティア活動を通じて西原村とかかわりを持った小出さんは、現地の農家から「農業してみらんか」と声をかけられたことがきっかけで、本格的に農業に取り組むことを決意した。現在では1.5ヘクタールの畑と3か所のビニールハウスを活用し、サトイモやサツマイモ、ホオズキなどを栽培している。
「まさか自分がここで農業をしているとは思わなかった。でも、とても充実しています」と小出さんは笑顔で語る。妻の美紗子さん(42)とともに農作業に励む日々は、3月下旬の収穫時期にはサトイモ畑で丁寧に土を払い、大きさと形を確認しながらの作業が続く。作業の合間には「風が気持ちいい」「今が一番過ごしやすいね」といったたわいもない会話を交わし、時には「昼からお花見に行こう」と目配せするなど、穏やかな時間も過ごしている。
村のPRとブランド化への取り組み
小出さんは単に農業を営むだけでなく、村の活性化にも積極的に貢献している。特にサツマイモのブランド化に力を入れており、地域の特産品としての価値を高める努力を続けている。近くでは観光客や地元住民に向けた野菜の直売も開始する予定で、村の農産物をより多くの人に知ってもらう機会を創出しようとしている。
熊本市中心部から車で約40分の距離にある西原村は、阿蘇外輪山を望む田畑が広がるのどかな地域だ。3月下旬にはあちこちで菜の花が咲き、春の訪れを感じさせる風景が広がっている。小出さんはこうした自然豊かな環境の中で、農業を通じて村の復興と発展に寄与したいと考えている。
地震から10年、新たな力で前進する被災地
熊本地震から10年が経過しようとしている今、被災地では小出さんのような移住者を含む新たな力が加わりながら、復興への道のりを歩み続けている。災害ボランティアという偶然の出会いが、地域に根ざした持続可能な活動へと発展した事例は、被災地の再生にとって希望の光となっている。
小出さんと美紗子さんが育てるサトイモやサツマイモは、単なる農産物ではなく、地域の絆と復興のシンボルとしての意味も持っている。これからも夫婦二人三脚で農業に取り組みながら、西原村の魅力を発信し続けていく決意だ。



