八女茶農家が全国茶品評会で初の最高賞、玉露の部で栄光を掴む
昨年の全国茶品評会「玉露の部」において、福岡県八女市黒木町の茶農家、徳永慎太郎さん(37)が最高位の農林水産大臣賞を初めて受賞しました。これは、国の地理的表示(GI)に登録されている「八女伝統本玉露」を生産し続ける徳永さんにとって、10回目の出品で達成した栄光です。八女茶の現状や今後の抱負について、徳永さんに詳しく聞きました。
八女伝統本玉露の特徴と生産へのこだわり
八女伝統本玉露は、香りとうまみが強いことが特徴です。収穫前には約20日間、わらなどの天然資材で被覆を行い、光を遮ることでうまみ成分を際立たせています。徳永さんは、「遮光によって青のりに似た独特の香りが生まれ、手摘みで一番茶のみを収穫するなど、栽培には手間がかかります」と説明します。この丁寧な生産方法が、受賞につながった一因と言えるでしょう。
受賞への道のりと独自の工夫
徳永さんは、「いつかチャンスが来ると信じ、毎年安定して上位に入ることを重視してきました」と語ります。過去数年は4、5番目に位置していましたが、星野村の受賞歴がある農家の畑を見学し、剪定や肥料のアドバイスを受けるなど、努力を重ねました。また、日光がよく当たるように枝数を減らすなど、独自の工夫も取り入れています。今後は連覇を目指し、挑戦を続けたいと意欲を見せています。
災害を乗り越え、八女茶全体への思い
2012年7月の九州北部豪雨では、自宅が全壊し、畑の約4分の1が被害に遭いました。しかし、広川町などで新たな土地を確保し、他の生産者の助けも借りながら、以前よりも広い面積の畑を整備しました。この経験から、「玉露の日本一は八女茶の産地から出し続けなければならない」と強く思うようになり、品評会への意欲が高まったと振り返ります。
八女茶の現状と課題
近年の抹茶ブームにより、玉露や煎茶から抹茶の原料となるてん茶に転換する生産者が増え、取引単価も上昇しています。一方で、八女茶の生産者数は減少傾向にあり、県茶業青年の会の会員は15年前の100人以上から44人にまで減っています。山あいなど作業効率が悪い地域の畑が荒れることも課題として挙げられています。
今後の抱負と海外からの関心
受賞後は、米国やカナダ、スイス、スペインなど海外からの卸先担当者が畑を訪れ、生産方法について質問する機会が増えました。徳永さんは、「海外から高い関心を寄せられ、うれしく思うと同時に、非の打ち所がない生産者にならなければと感じています」と語ります。今後も、八女茶のブランドに甘んじることなく、急須で飲むお茶を作り続け、産地と愛好家のために貢献したいと抱負を述べています。
徳永慎太郎さんのプロフィール
- 八女市黒木町出身。八女市、筑後市、広川町の計5.5ヘクタールで玉露、煎茶、かぶせ茶を栽培。
- 中学生時代はマグロ漁師に憧れたが、山が好きで八女農業高校に進学。静岡県島田市で2年間の研修後、20歳から家業を継ぐ。
- 昨年4月から福岡県茶業青年の会の副会長を務める。11月から2月は林業に従事し、間伐を行う。



