過疎の寺が「日本ファン」の共同所有で再生 世界から資金集め宿坊に
過疎化が進む地域の寺院を、後世に残すための画期的なプロジェクトが動き出した。世界中から資金を集め、旅行者が宿泊できる宿坊として再生する試みだ。歴史的建造物の保全と地域の活性化を両立させる新たなモデルとして注目を集めている。
海を越えて投資物件を確認
世界遺産・那智の滝がある和歌山県那智勝浦町から南へ約10キロ。江戸時代に創建された旧宝光寺は、山あいの小さな集落にひっそりと佇んでいる。今年2月中旬、ポルトガル出身で英国在住のITエンジニア、ジュリオ・バロスさん(34)らがこの寺を訪れた。
「とても美しく、地域の人々に大切にされてきたことがよく分かります」とバロスさんは語る。自身が「投資」した物件を実際に確認するため、海を越えてやってきたのだ。
一行を案内したのは、管理を任されている別の寺の住職、西山十海さん(45)。西山住職は英語で寺の由来や築約150年の建物の構造、地域との深い関わりについて丁寧に説明した。
地域のよりどころ しかし支え手不足
旧宝光寺の檀家はかつて数十軒あったが、急激な人口減少により現在は20軒ほどに減少。宗教法人も解散に追い込まれた。今でも地域の精神的よりどころとしての役割は続いているが、高額な修繕費が重くのしかかっている。
西山住職は「昔とは違い、住民の寄付だけで費用をまかなえなくなっている」と現状を語る。クラウドファンディングで資金を募ることも検討したが、文化財の改修に必要な大きな費用を集めるのは容易ではない。
「PlanetDAO」プロジェクトに参加
そこで西山住職は、ある革新的なプロジェクトに参加することを決断した。「PlanetDAO(プラネットダオ)」と呼ばれるこのプロジェクトは、世界中の出資者が「共同オーナー」となって文化財の保全と活用をめざす仕組みだ。
プロジェクトの仕組みは以下の通り:
- 旧宝光寺の建物を保有する
- 世界中から出資者を募り共同所有権を設定
- 集めた資金で建物を修復・改修
- 宿坊として活用し収益を生み出す
- 収益の一部を出資者に還元し、残りを保全費用に充てる
このプロジェクトの最大の特徴は、単なる寄付ではなく「投資」としての性格を持っている点だ。出資者は文化財の保全に貢献しながら、将来的な収益の可能性も得られる。
日本文化への愛着が原動力
プロジェクトに参加する出資者の多くは、日本文化への深い愛着を持つ「日本ファン」たちだ。バロスさんのように海外在住者も多く、日本の伝統的な建築や文化を守りたいという思いが資金集めの原動力となっている。
西山住職は「このプロジェクトは単なる建物の保全だけでなく、地域コミュニティの再生にもつながる」と期待を寄せる。宿坊として活用されることで、地域に新たな人の流れが生まれ、経済的活性化も期待できる。
持続可能な文化財保全の新モデル
過疎化が進む地方では、歴史的価値のある建物の維持管理が大きな課題となっている。従来の方法では限界がある中、共同所有という新たな枠組みは持続可能な文化財保全のモデルとして注目されている。
プロジェクト関係者は、旧宝光寺の成功事例が他の地域にも広がることを期待している。日本の豊かな文化遺産を守りながら、地域の未来を切り開く試みは、これからの地方創生の重要なヒントとなる可能性を秘めている。
現在、プロジェクトは順調に進行しており、2026年までの宿坊開業を目指している。世界中の「日本ファン」の支援を受けた過疎の寺の再生は、伝統と革新が融合した新たな地域活性化の形を示すことになるだろう。



