インバウンド観光は地方が呼び込む新段階へ 識者が語る「司令塔」の役割
2026年3月15日、訪日観光は引き続き好調な状況が続いている。しかし、地方観光の司令塔となるべき観光地域づくり法人、通称DMOの存在感は依然として十分に高まっていない。この制度が創設されてから10年が経過した今、観光庁の有識者会議で座長を務めた東京女子大学の矢ケ崎紀子教授(観光政策)が、その成果と課題について語った。
DMOとは何か 地域活性化のための戦略的組織
矢ケ崎教授は、DMOについて次のように説明する。「観光を手段として活用し、地域活性化を実現していく組織です。事業者、行政、住民など幅広い関係者を巻き込んで、観光で稼げる地域づくりを目指す司令塔となる役割を担います」。具体的には、地域資源と親和性のあるターゲットを定め、マーケティングや受け入れ環境の整備などを戦略的に実施し、旅行消費を域内に広く波及させることが重要だと指摘する。
さらに、「ビジネスである観光振興と、住民の暮らしを向上させる地域づくりを両立させることが求められます。こうしたDMOを育成するのが観光庁の制度の目的です」と述べ、観光政策の核心を強調した。
制度創設から10年 成果と残された課題
昨年で制度創設から10年が経過したが、矢ケ崎教授は現状について言及する。「制度そのものがここ数年で大きな変化を遂げていますが、地方におけるDMOの実効性にはまだ課題が残されています」。訪日観光客の増加は続くものの、その恩恵が地方に十分に及んでいない現実がある。
課題として挙げられるのは以下の点だ。
- 地域関係者の連携が不十分で、戦略的な取り組みが難しいこと
- 資金や人材の不足により、持続可能な運営が困難なケースがあること
- 観光振興と地域づくりのバランスを取るのが容易ではないこと
矢ケ崎教授は、「インバウンド観光は、今や地方が主体的に呼び込む段階へと移行しています。DMOが真の司令塔として機能するためには、さらなる制度の見直しと支援が不可欠です」と提言する。
今後の展望 地方創生に向けた観光政策の方向性
今後、DMOが果たすべき役割はますます重要になると予想される。矢ケ崎教授は、「地域資源を最大限に活用し、持続可能な観光モデルを構築することが鍵となります。これにより、旅行消費の域内循環を促進し、地方経済の活性化につなげることが可能です」と語る。
具体的な施策として、以下の点が挙げられる。
- 地域独自の文化や自然を活かした観光商品の開発
- デジタル技術を活用したマーケティングの強化
- 住民参加型の観光プロジェクトの推進
最終的に、「観光を通じて地域の魅力を高め、住民の生活の質を向上させる。これがDMOの目指すべき姿であり、地方創生の実現に不可欠な要素です」と矢ケ崎教授は結論付けた。インバウンド観光の新たな段階において、地方が主導権を握るための道筋が模索され続けている。



