かつて日光街道の宿場町として栄え、古い街並みが残る東京都足立区の千住地区。北千住駅から西へ歩くと、懐かしい外観の喫茶店から香ばしいコーヒーの香りが漂ってくる。
店内に300~400のカップがずらり
「千住宿 珈琲物語」の店内に入ると、カウンター奥の壁にぎっしりと並ぶカップやソーサーに目を奪われる。その数、なんと300~400客。多くはマスターの望月章雄さん(62)が長年かけて集めた有田焼で、色とりどりのカップを眺めているだけで楽しくなる。マスターの自作カップもあり、メニューによって使い分けている。27年にわたり陶芸教室に通うだけあって、素人目には有田焼との見分けがつかない完成度だ。
自家焙煎コーヒーと手作りケーキ
毎日3、4種を用意するケーキも、もともと仕入れていたケーキ店が廃業したのを機に、自ら作り始めたという。「ほかの人に任せるより、自分でやってしまいたいタイプなので」と望月さん。器用さと創作意欲に驚かされる。
コーヒーにもこだわりが詰まっている。豆は店内の焙煎室で自家焙煎しており、「豆によって火加減や時間を変える」という繊細な作業だ。豆を量ってひき、ポットを上下させながらお湯を注ぎ、1杯ずつ丁寧に入れていく。コーヒー好きの記者は「物語ブレンド」(税込み700円)を注文。深いコクと上品な苦みが際立ち、洗練された味が口の中に広がった。
開店から37年、広がる客層
東京・浅草出身の望月さんは、高校を卒業後、都内の喫茶店で5年半ほど修業を積んだ。親戚が多く住む千住を気に入り、1987年に開店。地元の常連に加え、最近は学生風の若者や外国人も多く、客層が広がったそうだ。中年男性が「小さい頃に来た」と思い出を語るなど、長く続けたからこその出会いもある。「そんな言葉を聞くと、またやる気になる」。こだわりの1杯を巡る物語が、これからも紡がれていく。
店舗情報
- 住所:東京都足立区千住3の6
- アクセス:北千住駅から徒歩7分
- 定休日:火・水曜
- 営業時間:平日午前8時~午後7時、土曜午前8時~午後5時、日曜午前9時~午後5時
- 支払い:現金のみ
- 問い合わせ:03-3882-5524
記者のお気に入り:千住 街の駅
北千住駅と珈琲物語の中間あたり、旧日光街道沿いにある観光案内所「千住 街の駅」は、街歩きの休憩場所としてお薦めだ。かつて鮮魚店だった築100年以上の建物を利用。昔の水道や水洗い場などがそのまま残っており、当時の店舗の雰囲気をうかがうことができる。観光マップやパンフレットが置かれ、葛飾北斎の浮世絵の絵はがきなどお土産品も販売。地域に詳しいスタッフが常駐し、宿場町の歴史や街の見所を教えてくれる。足立区観光交流協会の小池俊輔総務課長(47)は「千住は新しさと古さが交じった『モザイクの街』。訪れた際は、気軽に立ち寄って街のことを聞いてほしい」と話している。



